そらのいろ

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目の離せない弟の旅立ち時を見送る姉の心境とはこんな感じなのだろうか。

心配だけど、成長しようとする彼を見送りたい。

私はナルトくんに手招きする。

不思議そうに彼は寄ってくるとその体をぎゅっと抱き締めた。

「いってらっしゃい。頑張ってね」

ふわふわとしたナルトくんの金の髪を撫でる。
ナルトくんは私の背に腕を回すと

「…すず音ねーちゃんってほんといい匂いがするよな。すげーふわふわしてて柔らかいし、めちゃくちゃ気持ちいい。
ぜってー強くなって帰ってくるからな!期待しててくれよ?」

「うんっ」

体が離れる。

「じゃあ、すず音さん。
私ナルトの見送りに行くから…またねっ」

「え!サクラちゃん来てくれるの!?」

「そうよ。感謝しなさいよね」

「やったーーーー!!」

「うるっさいバカナルト!」

ぎゃあぎゃあと賑やかな声が病室を出て少しずつ遠くなっていく。

しばらくこの風景を見れないのかと思うとなんだか寂しく感じた。

「じゃっ行きますか」

いつの間にやら荷物等を腕にかけていたカカシ先生がヒョイっと私を抱き上げてベッドから離した。

「え。まっカ、カカシ先生っ
今は鎮痛剤が効いてますから大丈夫です。
どこも痛くないし気怠さもないから歩けますっ」

「んー?聞こえないなー」

「もーっ」

顔と顔。ほぼ至近距離。

こんなに近い距離で聞こえないはずはありません。

カカシ先生はやはり下ろす気は更々ないようでスタスタと歩き出して病室を出る。

「あー、あとさ。
そのカカシ『先生』って呼ぶの止めてもらってもいい?」

「え?」

「教え子でもなんでもないのに妙に罪悪感湧くのよ。それ。
それに俺達恋人同士でしょ?
『先生』呼びはないでしょーよ」

「なら…カカシ『さん』?」

「呼び捨てという発想はないわけネ…」

はぁ…と諦めたようにため息をつく彼。

やがて「ま、先生よりかはいいか」とぼやいた。

私は彼の横顔をしばらく見つめ

「…カカシさん」

「ん?」

いつかした時みたいに、私はしばらく彼を見つめてそっと目を閉じる。

カカシさんはそれを見るとフッと笑い

「今度は、目を開けちゃダメよ」

少しずつ近付いてくる気配。

やがてそっと唇に重なった熱。

それは柔らかな唇で無機質なマスクではない事が容易に分かった。

周りに人がいなくて本当に良かった。

こんなにかっこいい人の素顔…誰にも見せたくないもの。

私達のキスは、すぐに終わる事はなかった。


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