最後の物語

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「あとは紅さんですね…」

「少しずつ立ち直ろうとはしてるけど…
こればっかりは時間に任せるしかないわよね…」

いのちゃんも心配のようだ。

子供も身篭ってる身で精神的な大ダメージなんて…
母子共に心配だ。
凄まじいストレスが原因で流産なんていくらでも例がある。

なんとか立ち直って、無事に産まれてほしい。

私は祈る思いでそう考えた。

私だって…少し前同じように大切な人を失いかけた。
似たような気持ちは分かる。

「紅先生のことならオレに任せろ。
アスマに頼まれたんだ。責任を持って様子を見に行く」

シカマルくんがテーブルに肘をつき顎をその肘をついた手を乗せながら言う。

それを聞きながらテーブルに出していたノートをバックにしまいながら

「私…復讐とか、仇討ちとか…そういうのは無縁の世界にいたから…
授業で習った教科書通りに、復讐はダメだ。とか、恨みは新しい恨みを生むから恨んじゃダメだ。とか…
他人事みたいにそういう風にしか考えたことなかった。
でも、いざ自分の親しい人や愛する人が誰かによって失って…失いかけて
恨むな。復讐なんてするなって言われて、実際にそれを我慢するっていう方が難しいってよく分かった。
私…本当にぬるま湯の平和な世界でのんびりしてたんだな、って…」

「仕方ないわよ。すず音さんはそういう世界にいたんだから」

「これから知っていけばいいだろ。
…まあ、出来るなら、そういう世界とは無縁でいてほしいけどよ…」

「すず音さんはそのままでいてほしいって思っちゃうよねー…」

チョウジくんはそう言いながら三袋目のお菓子の袋を開けた。

場の重い空気に私はハッとし、慌ててニコリと笑うと

「あ…ごめんなさい。暗くなっちゃいましたね。
これから任務なんでしょう?…本当に…気を付けて…」

「平気よ。今回のは大したことないから」

「別にオレ達じゃなくてもいいよな。
期間と数量限定の人気菓子を買いに行くなんて」

と、シカマルくんはため息をつく。

「すず音さんもごめんね?
最近忙して店を開けられなくて」

「気にしないで…
任務、頑張ってね」

「うん!」

にっこりといのちゃんは笑い
そして私達は定食屋を出てその場で別れた。


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