最後の物語

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僅かな前奏を弾き、私は歌いだす。

やはりギターは練習し慣れてないせいか弦を弾く指はぎこちない。

それでもなんとか指を動かしながら歌い続ける。

お義母さんとお義父さんの家にいた頃、私に教えてくれた先生との練習を思い出しながら。

刺すような夏の熱い日照り。

しかしそんな過酷な気温とは対照的な穏やかなメロディー。

木ノ葉の空き地に響く、異世界の外国語。

爪弾き鳴り渡る弦の音は道行く人々の耳にも届き
ひとり、またひとりと歩くその足を止めてこちらに耳を傾ける。

目の前にいるみんなはそれぞれ目を閉じて音や歌に集中していたり
体を揺らして音に乗っていたりと様々だ。

楽しんでくれてるその様子に私は安心してゆったりと歌い続ける。

安心したせいか最初の緊張はなくなり私の体も歌に合わせゆっくりと揺れる。

サビを歌い、メロディーを歌い…
元々それほど長くなかった曲はやがて終わりを迎える。

歌い終わり少し弾いてから弦を爪弾く手を止める。

少しの間。

だがすぐに沢山の拍手が空き地に鳴り響いた。

「アンコール!アンコール!」

「すげーよ!ほんと、素直に感動した!」

「さっすがすず音さんね!
すっっごく綺麗だった!」

「確かにこいつは、オレひとりが独占するのはもったいねぇな」

「う゛あ゛あ゛あ゛!!
いい歌声だった…ッッオレは感動しましたすず音さ゛ん゛ん゛ん゛!!!」

「ちょっとガイ…鼻水垂れてるんだけど」

沢山の拍手に絶賛の声に囲まれ私は嬉しさと照れくささで顔を赤くし、しばらくモジモジとしてその場から動けなくなる。

「ありがとな。すず音」

「シカマルくん…」

「弾き語りもだが…約束を思い出してくれて嬉しいぜ」

「そうよすず音さん。
ここにいる全員が、すず音さんの記憶が戻る事を願ってたんだから!」

と、いのちゃんが言う。

「思い出せて本当に良かったです」

「ああ!
もう二度と忘れちゃダメだからなっすず音ねーちゃん!」

サクラちゃんとナルトくんの元気な笑顔。

私は胸の奥から膨れ上がる気持ちをどう言葉にしていいか分からず、どう表現していいか分からず、散々考えた結果出た言葉を吐き出した。

「ありがとう…!」

様々な、思いを込めて頭を下げる。

空き地はまた

沢山の拍手の音に満たされた。


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