山守月天子

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「見てごらんすず音。
北に輝くあの星はね、何処からでも北という方向を教えてくれる空の案内人なのよ。
道に迷った時は星を見なさい。
そうすれば…あの星が教えてくれるわ」

「お義母さん…どの星ですか?
私には沢山の星があってよく分かりません」

「なら帰ったら本をあげましょう。
それからまた、星を見に来ましょう。
そうしていく内にすぐに見つけられるようになります。
…いずれ流れ星も見られるかもしれませんね」

「流れ星…ですか?」

「満天の星空を滑る一筋の光。それが流れ星よ」

「…いつか、見れるでしょうか?」

「ええ。きっと」

夏の暑さを感じた。

「…………」

目を覚ました私は相変わらず寝起きの悪さでぼんやりとしたまま体を起こす。
横を見ると全裸で寝入る愛しい人。
私の体も何も身に纏っておらず、胸元には散らばった愛の証でもある赤い痕。
ベッドの下には私と彼が着ていた服や下着が落とされている。

「…………」

一通り辺りを見回し、まだぼんやりとしたまま顔を上げて何も無い空を見つめながら私はポツリと言った。

「……お義母さん」















「御両親の夢を見た?」

「はい。と言っても出てきたのはお義母さんだけでしたが」

カカシさんと朝食を食べながら私は今朝見た夢の話をする。
彼は「へー」と興味深そうに声を漏らし、焼き鮭をお箸で摘んで一口食べるとそれをご飯と一緒に飲み込み

「どんな夢だったの?」

「私が小さい頃の夢でした。
私の両親は旅行が好きで、ふたりが出会ったのも海外の旅行先なんです。
お義父さんは写真で景色を撮る趣味を持ち、お義母さんは星を見るのが好きで天体観測が趣味でした。
私は、そんな両親の外国の話と写真を見て育ったんです。
幼い私が寝付く為の絵本がわりのようなものでした」

「一般人が自由に諸国の観光なんて、本当に平和な世界なんだねぇ…それで?」

「私が見た夢は、国内で星がよく見える所に両親に連れられた時の夢です。
普段街中で生活してて星があまり見れない私はその多さにとても感動した覚えがあります。
その時、お義母さんから空の案内人の事と流れ星の話を聞いたんです」

「なるほど。それで初めて会った時流れ星の事を言ったんだネ。
それで、空の案内人って?」

「北極星の事です」

「ほっきょくせい?」

「この世界には無いんですか?
何処からでも方向を教えてくれる星」

「あー、そういう事。
あるにはあるけど…そんな名前じゃないなぁ」

「そうなんですか。
じゃあ…この世界の星と私の世界の星は違うのかもしれませんね」

「世界が変わると星空も変わる…か。
規模が大きすぎてそんな発想思い浮かばないなぁ」



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