山守月天子

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「ここがネジくんとサクさんが作ったというお墓ですか…」

翌朝。
私は泊まっていた旅館から出て木ノ葉隠れの里への帰路につく前に、山彦火山に寄っていた。

朝起きてカカシさんから聞いたのはサクさんの旅立ち。
サクさんはネジくんと一緒にお墓を作ったあと「せっかく自由になれたのだから色んな場所を見てまわりたい」そう言って昨日のうちに一人旅立ったという。

良ければその旅立ちを私は見送りたかったのだが、きっとサクさんが一番お別れを惜しんだのはネジくんだろう。
二人の邪魔をしないという意味では、少し寂しいけれどこれで良かったのかもしれない。

太陽が昇る前に儚く消える。
まるでサクさんは月が見せた幻想のような人だった。

「ネジくんは…良かったのですか?」

そう言って私はネジくんを見上げる。
彼は墓標を見つめながら、とても冷静な表情で

「ああ…サク本人が望んだ事なのだからな」

私だけかもしれないが、サクさんとネジくんはお互いに大切な人だと思っているように感じた。
木ノ葉に一緒に来てくれたらネジくんと幸せになれたかもしれないのに…

「(…?あれ、でも…ネジくんには既に好きな人が…)」

「それじゃ みんなそろそろ良いか?」

カカシさんの声にハッとして私は墓標に視線を戻す。

「黙祷!」

カカシさんの合図で私達は一斉に目を閉じて黙祷を始めた。

旅立ったサクさんとの出会い、そして…長い間苦しみ続けていた犠牲になった人々と
悲しみのあまり自分を失ってしまっていた月虹の国の女王、ミソカさん。
これまであった色々な事を思い返して私は黙祷をする。

やがて黙祷は終わり、それぞれ目を開きもう一度墓標を見つめた。

「サクさん…きっと何処かで、元気にしていますよね?」

「ああ…サクなら…心配ねぇってばよ」

そう返してくれたのはナルトくん。

「サクさん…元気で。またいつか会いましょうね。
今までありがとうございました」

サクさんが旅立ったであろう山の奥を見つめ、私は一礼をした。
頭を上げるとカカシさんがポンッと大きな手を乗せて

「さ、帰ろう。木ノ葉に」

そう言ってニッコリと笑ってくれる。

「はい…!」

コクリと大きく頷いて私達は墓標に背を向けて歩き始めた。

私達が帰るべき場所…木ノ葉隠れの里へ。



















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