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□NARUTO拍手ログ
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【子カカシと既婚女性】その7


情けない。

俺は情けなさのあまりハァ…とため息をつく。
すると喉が刺激されたのかゴホゴホと咳き込んだ。

「大丈夫ですか?カカシさん」

「………」

寝込むオレの横に女の人が心配そうに隣りに座って顔を覗き込む。
情けない俺の姿を見られたくなくて、もぞもぞと寝返りをうち背中を向けた。

「(俺としたことが風邪をひくなんて)」

任務の最中妙に体がだるかった。
夏でもないのになんだか体が熱いし、頭もぼーっとして意識がふわふわとしていた。

それに気付いたのはミナト先生。

俺に額あてを取って近付くよう指示をし、それに素直に従った俺はミナト先生の大きな手を額に押し付けられ「熱があるよ」と言われた。

今日の任務はDランク。
大した内容でもないから早く帰って休みなさい。と、俺は早々に帰宅指示が出された。

どんな内容だろうと任務は任務。
任務を途中で放棄なんて、と言い張ったが「隊長命令だよ」と言われてしまっては仕方が無い。
リンとオビトに心配され見送られながら俺はすごすごと家に帰ってきた。

まだ早い時間に帰ってきた俺に女の人はキョトンとしていた。
事情を説明すると彼女はサッと青ざめてテキパキと俺の布団と着替えを用意し「まずは病院に行きましょう」と手を引いた。

「寝ていれば治る!」とその手を振り払ったが「ダメです!」と珍しく強気な彼女に怯み、結局病院につれていかれ診察をし、薬を貰って帰ってきた。

風邪を自覚したせいか朝にはあった食欲は激減し、でも朝食は食べていたので薬を飲んで大人しく布団に潜る。

額には冷水で冷たく冷やされたタオルが女の人の手によって乗せられている。

「カカシさんの体の変化に気付けないなんて…
私ったらどこまでぼーっとしてるんでしょう」

「…気にするなよ。俺だって気付かなかったんだし」

「体は辛くないですか?」

「辛いに決まってるだろ」

「…そうですよね……」

シュン、と悲しそうに俯く女の人。

…なんで俺って彼女にこんな顔しかさせられないんだろう。
笑ったこの人が好きなのに…

「気にするなって」

「……」

「…人一倍体に気を使ってたのにこのザマだ。
泣きたいのはこっちだよ」

「カカシさん…」

「挙句任務を途中放棄とか…最悪だ」

「……カカシさんは大人ですね」

「はぁ?」

背を向けていた体を動かして彼女を見る。

彼女は優しく微笑んで俺を見て

「でも、いくら精神的に大人でも貴方の体はまだ子供なんです。
安定していないのですから突然の病気は仕方ありませんよ」

「子供扱いするなっ」

「あ、ごめんなさい」

クスクスと笑う女の人。
この様子じゃまだ子供扱いしてるな。どーも。

「………」

むすっと再び彼女に背を向ける。
こんな事するから子供扱いされるんだと分かってても腹が立つ。女の人を好きだと自覚し意識しているから余計に。

「(でも…笑ってくれて良かった)」

ああ、俺は彼女に相当入れ込んでいる。

この人は既婚者なのに。

なんで俺は子供で、彼女は大人なんだう。
もう少し早く出会っていれば彼女を俺のものにすることが出来たんだろうか?

もう誰も心に入り込めないのか?
頑張れば隙間にでも入り込めるだろうか。

「(隙間じゃ、足りない)」

俺だけの人にしたい。

熱で頭がぼーっとする。
自分が今、なにを考えているのかすら分からなくなる。

むくり、と体を起こす。
そして不思議そうに俺を見る女の人を見た。
俺の額から落ちたタオルを拾おうとする彼女の手を素早く掴む。

「え…カカシさん…?」

「………」

「大丈夫ですか?目が虚ろで…熱が上がったんじゃ」

「名前、知りたい」

「へ?」

「教えろよ。…名前、なんて言うんだよ」

「それは…ミナトさんと火影さんから…」

「なんでダメなんだよ。なんで…」

「カカシさん?」

「なんで、俺じゃないんだ…」

「あの」

じり、と彼女に近付く。
ふらふらと上手く立てそうにない俺は四つん這いで近付き、俺の手を振り払って逃げる女の人を確実に追い詰めていく。

「待って、待ってカカシさん」

怯える女の人が可愛くて見える。
相当自分は末期なのだと心の中で失笑した。

「あっ…」

トン、と壁に女の人の背が当たる。
すかさず壁に両手をついて追い詰めた。

体も腕もだるい。
顔も体も熱い。

困惑して見上げてくる彼女が愛おしい。

今まで一度も見せた事がなかった素顔を晒す勢いで俺は口元のマスクを下ろす。

「っカカシさん…!?」

「黙って」

何かを察した彼女が逃げる前に俺はすぐに顔を近付けた。

風邪が伝染るなんて知るもんか。
むしろ伝染るくらい長く口付けてやる。

旦那なんか知るか。
前も言ったが手放す方が悪い。

俺だけの人にしたい。

俺だけの…俺だけの…っ!

「いけませんカカシさん!」

唇が重なる直前に彼女は顔を背け、ぎゅっと俺を抱きしめてそう言った。

「熱に魘されてるんですっ
さっきより体温が上がってるじゃないですか!」

「離せ!俺は…っ!?」

額に柔らかな感触。

女の人はそっと優しく、その柔らかい唇で俺の額にキスをしていた。

「っ…」

「ほら…こんなに熱が高いじゃないですか」

そのまま俺の額に頬をくっつける。

「大丈夫…傍にいます。
今まで病気で寝込んでてもずっとひとりだったんでしょう?
今は私が傍にいますから…」

「………」

頭を抱くように抱きしめてられる。

女の人から香る匂いは何故かとても落ち着いた。

「(柔らかい…)」

ふわふわと気持ちの良い彼女の胸。
その胸が俺の顔に当たり、不謹慎だがそれを堪能してしまう。(俺だって男だ)

しばらく目を閉じて彼女に抱かれているとそっと体を離され

「…落ち着きましたか?」

「……ああ」

「少し眠りましょう。そろそろ解熱剤も効き始めて寝付きが良くなる頃でしょうから」

女の人に促されて大人しく布団に戻る俺。

彼女は再び俺の傍に座ると、冷水で冷やしたタオルを額に置きそして優しく頭を撫でてくれた。

心地よいその動きにウトウトと眠気がやってくる。

「目が覚めたら、ご飯食べましょう。
たまご粥作っておきますから…」

「なんで…そのチョイスなんだよ…他にもあるだろ…」

目も閉じて意識も半分以上夢の中。
まどろみの中聞こえた彼女の言葉にとりあえずつっこんでみると

「いつも作ってくれますから」

「…?」

「あな…が…」

意識が途切れ最後まで聞くことが出来なかった。

だが、熱があるというのにいつも以上に深く深く寝入る事が出来た。

きっと彼女が傍にいてくれたから…

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