闘病生活

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カカシはしばらく男性から目を離してぼんやりと前にある花壇を見つめ
やがて口を開くと

「あの時は…悪かったね。睨んだりして」

「気にしてません。
恋人が告白される所なんて見たら誰だって嫉妬しますよ。
オレもすず音さんに恋人がいるかどうか聞くのを忘れてましたし。
…それにあの写輪眼のカカシに睨まれたんです。
これは自慢出来ることですよ」

「そ、そういうもんなの…?」

いまいち自分の知名度がどういう風に一般人に伝わっているのか分からないカカシ。

睨まれた事が自慢になるって俺の知名度どういう効果をもたらしてるわけ?

と、些か不安になった。

「…すず音さん、そろそろ山場みたいですね」

「ああ。……もう、起き上がることすら辛いらしい」

「早く越えるといいですね」

「本当にな…」

すず音は発作と関係なく常に全身が痛むようになっていた。

体を起こす事も辛く、車椅子に乗って移動などとても難しい状態。

「痛い痛い」と涙を浮かべる婚約者の姿が痛々しく、カカシはとにかくすず音が可哀想で仕方なく
何もしてやれない自分の無力さを呪った。

「あの子のために何かしてあげられる事があればなぁ…」

ポツリとぼやくと男性はカカシを見て

「傍にいる事がしてあげられる事じゃないですか」

当たり前のような表情でそう言った。

カカシはポカンとして男性を見る。

「もどかしいですが病気は常に自分との戦いです。
何もしてやれることはありません。
…でも、傍にいて支えるだけでも随分違います。
孤独を感じないって大切な事だと思いますよ」

「………」

「それでも物足りないのなら…
そうですね…オレなら、自分がお守りとして持ってる物を渡すかな…」

「自分のお守り…」

「今まで自分を守ってくれたものにお願いするんです。
この人も守ってくれ、と。
相手も自分の愛しい人を守ってくれた物に守られてると思うと安心出来ませんか?」

「そうだね…それは、いい案だ」

そっと、カカシは自分のポケットにある物に手を置く。

中からチリンと鈴の音が鳴った。



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