最後の物語
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「あの…全部拾いましたよ」
「え?あ、ありがとうございます」
そう言って錫杖の様なものを杖に立ち上がり、上げた男性の顔を見て私は静かに驚き、そして納得した。
「目が…」
「ええ。この通り見えてなくて…
すみません。ある程度の人混みならぶつかる事なく歩けるんですが予想以上の混み具合で」
「こちらこそすみません。
宜しかったら目的の場所までご一緒しますよ?」
「いえいえ。大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」
私からリンゴをひとつひとつ受け取って腕に抱えていた袋に入れていく。
「それでは」
と、頭を下げる男性。
その時
「あれ?すず音ねーちゃん」
「よーすず音。こんな所でどうしたの」
ナルトくんとカカシさんが何処かからかやって来た。
飛び降りた様子を見るにおそらく屋根からだろう。
「いつもの勉強?」
「はい」
「そっか。頑張ってネ」
ニコッと微笑んでくれるカカシさん。
その時、意外な所から反応があった。
「木ノ葉の里の…すず音さん?」
そう言って反応したのはリンゴを落とした盲目の男性だった。
「え?は、はい」
意外なあまり私は驚いて返事をする。
「貴女がそうでしたか。
一時期噂になっていたんですよ、木ノ葉にチャクラが無いのに生きている人間がいる、と。
医療に携わる者の中で特に話題になってまして、あまりにも信じられない内容に単なる噂だと言われる程なんです」
「え…」
更に驚く。
私が噂になっていたなんて知らなかった。
ハッとカカシさんを見ると少しだけ厳しい表情をしている。
まるで警戒しているような、そんな顔だ。
「貴方がトウホウさんですね?」
「はい」
カカシさんの問いにトウホウさんと呼ばれた男性は素直に答える。
「その噂…何処で聞きました?」
「何処…うーん…そうですね…
世間話として人伝てで聞いたのは覚えてますが何処で聞いたかは…」
難しそうに顔を歪めて考え込むトウホウさん。
「…そうですか。
…良ければ、あまりその噂を広めないようお願い出来ますか?
根拠の無い噂で彼女は何度か危険な目に遭ったことがあるんです」
「…?」
そんな、噂のせいで危険な目に遭ったことなんてない。
不思議そうにカカシさんを見ると彼はトウホウさんが盲目である事を利用し、大胆に人差し指を自分のマスクの前に一本立てて私を見ている。
黙って話を会わせろ、という事らしい。