最後の物語
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「先生…そんな治療法でボクの記憶は戻るんですか?」
困惑する若者にトウホウは困ったような表情をし
「最初にご説明した通り必ずとは限りません。
この巻物の中には様々な治療法が書かれております。
記憶を取り戻した方々が様々なきっかけで取り戻せたように、治療法も様々あるというのが私の長年の研究結果です。
なのでその人の感性というものを信じて治療を行う。それが私のやり方です。
この中から何気なく選んだ治療法が貴方にピッタリとハマり、簡単に記憶を取り戻せるかもしれません。その逆でこの中のどれもがハマらないかもしれません。
クジや運試しのようなものですよ。気楽に考えて下さい」
最終的にニコリと微笑むトウホウに患者は「そういうものなのか」とぼやいて数々の巻物を見つめる。
少しの間眺めたあと、一本の巻物を手にし
「では…これで」
「分かりました」
若者から巻物を受け取るトウホウ。
文章は付き人が書いたと考えるにしても
目が見えないのにどうやって書かれてある内容を把握するのだろうとナルト達はじっと見つめる。
トウホウは巻物を少しだけ開くと
「では…少し前に来て頂けますか?
私の手が届くぐらいの距離まで」
若者は言われた通り、前に広がる巻物を退かしながらトウホウの目の前に来る。
「驚かず、じっとしてて下さいね」
紙面の方を男の方に向け、額あたりに紙面をぐっと押し付ける。
若者は少し驚き体を引いたがすぐに落ち着いた。
「そのままですよ」
サクラはそんな治療の様子を見ながら、ふと今使われている巻物の垂れた箇所が床に転がって紙面が若干見えている事に気付いた。
内容までは読み取れなかったが内容が分からずとも驚愕するような事がその紙面には起こった。
「(文字が…消えてる…?)」
何かが書かれていたであろう文字が巻物の紙面から溶けるように消えていっている。
治療する様子を見るのも忘れてつい文字が消えていく巻物の紙面を凝視していると
「……はい、終わりましたよ。
どうですか?」
トウホウの声にハッとし慌てて顔をそちらに向ける。