最後の物語

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巻物の紙面を額から離された若者はしばらくぼーっと視線を俯かせて空を見つめ

「ぁ…ボク…いや、オレ…っオレは…!」

「まさか」

「記憶が…?」

ネジとナルトが思わず呟く

若者は少しずつ何かを思い出すように頭を抱えながら

「そうだ、オレは忍…砂隠れの忍だ…!」

「っなんだって!?」

驚愕するヤマト。

「記憶を失う前の事を思い出せたか?」

冷静に問うカカシに若者は何度も頷く。

「お…お前達木ノ葉の忍だな?
オレは風影様の命で単独任務を遂行していた。
任務を始めて二日後、野宿をして眠っていたオレに何者かが襲ってきた。
その顔は……っすまない。まだそこまでは思い出せない…
薪を付けていたから顔は見たはずなんだが」

「まだ本調子ではないのかもしれませんね。
時間を置けばいずれは全て思い出せますよ」

と、トウホウが言う。

「…どうします?カカシ先輩」

「ま、とりあえず保護でしょ。
木ノ葉に連れて帰って五代目に報告だな。
砂隠れの方にも連絡して何か返事が来るまでの間にある程度は思い出せてるでしょ」

「我愛羅も探してるかもしんねーもんな。
…なあ、我愛羅から命令されて何の任務をしてたんだ?」

ナルトの質問に若者は素直に答える。

「記憶喪失者続出の原因調査だ」





















カカシさんの家の掃除も終わり家に帰った私。

夏の季節の掃除は本当に大変だ。

疲れるし汗もひどい。

今は夜だから幾らか涼しいがそれでも蒸し暑さは変わらない。

「お風呂に入らなきゃ」

ネックレスを外し、左手の薬指にある婚約指輪を取る。

お風呂から上がった時、分かりやすいよう一番目に付くテーブルに置くと
ふと足元に置いてあった袋に詰めた彼の洗濯物が目に入る。

私の家で洗濯しておこうと持って帰った物だ。

袋から取り出したカカシさんの黒い服を眺める。

任務で里を出て、あれから二日。

そろそろ帰ってくる頃だろうか…?

………………寂しい。

ぎゅっと黒い服を抱きしめて生地を顔に押し付けるとすぅーっと息を吸う。
そしてハァ…と吐き出すと

「カカシさんのにおいがする…」

大好きな大好きな、落ち着く匂い。

早く帰ってきて。

この匂いと暖かい腕と胸に包まれたい。

カカシさん…

カカシさん…



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