山守月天子
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食材を焼きながら一連の流れを見ていた私はクスリと笑い
「釣り、楽しめると良いですね」
「ほんと。でもサイならきっと大丈夫ですよ」
と、サクラちゃんも呆れた顔しながらも笑ってそう言った。
その時網の上に野菜を乗せていたサクラちゃんが私の背後を見て「あ」と言うと直後に私の背中にのしっと優しく体重がのしかかる。
「たっだいまーすず音ちゃん」
「おかえりなさいカカシさん」
カカシさんが私の後ろから抱きしめていた。
「待った?」
「今さっき始めた所です。ギリギリセーフですよ」
「カカシ先生が遅刻なんていつもの事だし」
「俺の威厳はどこへやら…」
「それよりカカシさん、ナルトくん達に釣りを教えてあげて下さい。
カカシさん確か上手だったでしょう?」
「上手っていうか…ガキの頃よく釣りで食料確保してたってだけだし」
「経験豊富には違いありません。
サイくん初挑戦らしいので指南してあげてはどうですか?
それに、ヤマトさん油っこい食べ物苦手なようですからお魚は多い方が助かりますし」
「えーヤマトの為に釣りすんのー?」
「カカシさんがお魚を捌くところ、私見たいです。
私じゃお魚捌けませんので…お願いします」
「んもーすず音ちゃんのお願いなら俺頑張っちゃうしかないじゃないの」
私から離れ両手をポケットに入れて川で釣り糸を垂らしてワーワーと騒ぐナルトくん達の元へと歩いていくカカシさん。
それを見送ったサクラちゃんはクスクス笑うと
「カカシ先生が唯一勝てないのってやっぱすず音さんだけですね」
「かわいいでしょう?」
「戦闘の時のカカシ先生とは別人みたい」
「ふふっ戦ってるカカシさんちょっと見てみたいです。
私はあまり見たことがないので」
「戦場は危ないですからね」
「危ない仕事をしてるカカシさんやみんなの為に私が出来る事って料理や息抜きに誘うくらいしかないから…
もっと他に役立てる事があればいいんだけど」
「そんな事ないですよ!
すず音さんはいつも通りニコニコしてくれてるだけで良いんですっ
それだけで、私は気持ちが安らぐんですからっ
きっとカカシ先生やナルト達だってそうです!」
「それなら…いいんですが…」
一般人である私が忍びの皆さんの為に何か出来る事。
それはあったとしても本当にごく僅かだろう。
力になれないと分かってるし、仕方ない事だと弁えてはいるもののやっぱり無意識に探してしまう。
力になりたい。
そう思う事自体、でしゃばりだろうか…?