山守月天子

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「すず音が知らないだけという可能性もある」

「っ…」

「カカシ先生!すず音ねーちゃんの事信じてねぇのかよ!」

「信じてるさ。
だが、異世界側からの干渉は不可能という確証が得られるまであらゆる可能性は考えないといけない。
すず音は16歳までしか元の世界にいなかった。
16歳では知らない事が多すぎる。まだまだ世間知らずの歳だ。
ただでさえすず音は御両親に大切に育てられたんだ。
知って欲しくない情報を遮断していた可能性もある。
すず音の言うこと全てが異世界の全てとは限らない」

「………」

俯き床を見つめる私の肩にカカシさんの手が乗る。

「信じたくない気持ちは分かるけどね…」

「でも…どうして今更…」

「それは分からない」

「私に…『帰れ』と…言ってるのでしょうか」

「え?」

「私はこの世界にいるべきでは無い。早く帰れと…」

「そんな事ない!絶対ない!!」

サクラちゃんが悲鳴にも似た声で大きく叫び私に抱き着く。

「帰らないで!帰らないですず音さん!!」

「そうだよ!せっかくすず音ねーちゃんはこの世界で幸せを見つけられたのに!
今更帰る必要なんかねぇってばよ!」

「じゃあどうして…?
世界と世界の干渉にどうして私にだけ影響があるんですか?
まるで…星の引力のように元の世界に引き寄せられてるのかも…
だから私の体に影響が…っ」

「だめっ帰らせない!すず音さんずっとここにいて!」

私の体に縋り付くサクラちゃん。

感情的なサクラちゃんとは対照的にナルトくんは意外にも冷静で何か深く考えている。
そして私の顔を覗き込むと真剣な目で見つめ

「………ねーちゃんの世界にも、大切な人がいるんだよな」

「…はい」

「すず音ねーちゃんは帰りたいのか?
オレ達やカカシ先生と一生の別れをしてでも、その大切な人達の元に帰りたいって思うのか?」

私とナルトくんのやり取りを静かに見守るカカシさんを見る。
彼はいつも通り無表情で、その心境を汲み取ることが出来ない。

「………帰りたくないです。
両親は大切です。今でも大好きです。
施設の仲間達や先生達にだって久しぶりに会いたい。……でも…」

左手の薬指にある婚約指輪を見る。
その左手をぎゅっと抱いて

「私が一生を捧げ、ずっと寄り添いたいと思った人はこの世界にいます。
だから…私は帰りたくありません」



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