山守月天子

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意識が遠のく。

私が、私である意識が……遠のく。

−−よく頑張ったわ

−−あなたは本当によく頑張った

−−これだけ頑張ったあなたを誰も責める権利なんてない

−−さあ おいで

−−こっちよ

「どうして……今まで…あんな奴等いなかったのに」

−−大切な人 帰ってきて

「おかげで…誰も人が来なくなっちゃった…
この間の人も、ダメ…だった」

あいつ等は私の話を聞かない。
忍じゃないけれど、腕に自信はあるようだから声をかけたら途端に襲ってきた。
怖くて、必死に逃げた。
なんとか逃げ切れた。
だけどあいつ等がいるせいで人が誰も近寄らなくなってしまった。

満月にならない、そんなメリットは出来たけれど
もう…私の意識が限界。
私が私で無くなれば……『これ』は永遠に続くだけ。

−−いかないで

「まだ…」

−−いかないで

「まだ、希望がある。
この間の小さな四角い物を誰かが見つけて…それを手掛かりに持ち主の人を探してくれてるかもしれない」

この間の人は忍だった。
だったら、探しに来てくれる人は忍かもしれない。

−−いかないで

−−いかないで

「行かなきゃ…っ私が、行かなきゃ…!」

意識が遠のく。自分が誰だか分からなくなる。

頭が痛い。

頭が痛い。

−−あと 6人

満月まで あと、6人














夜の街道を第七班の五人が走る。

食事休憩等悠長な事をしている時間はなく、各自持参の兵糧丸で空腹を凌いでいた。
日中は暑さの関係で頻繁に休憩をしたからこそ、夜の涼しい時間帯で遅れを取り戻さなければ。
そう考えたナルトは踏み込む足に更に力を入れてひとり先頭を独走する。
独走し過ぎて他のメンバーと距離が開いている程だ。

「ナルト!少しスピードを落とせ!
お前のスタミナに合わせてたらすぐに皆へばるでしょ!」

リーダーであるカカシが先頭を走るナルトに声を張り上げる。

「みんながおせーんだってばよ!」

「予定通りに進んでる。そう焦るな」

「そうよナルト!
すず音さんが心配な気持ちは分かるけど…
あんたの体力に私達がついていけるわけないでしょ?もっとチームワークを意識しなさいよ!」

「でもよ!」

「一番すず音さんを心配してるのはカカシ先生なの!
そのカカシ先生が焦る気持ちを抑えて冷静に私達の事まで考えてくれてんのよ!?
ちょっとはあんたも気を使いなさいよ…」

サクラの咎める言葉はナルトはハッとし振り返る。

カカシの表情はいつも通り無表情で本当に婚約者の危機を心配しているのか分からなかった。
でも、それがはたけカカシでもある。

ナルトは前を向いて少しだけ俯くと、走るスピードを抑えて皆と走り始めた。



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