山守月天子

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「色んな男とシたいから無意識に色目を使う。
清やかで純情ぶるな。お前は男に腰を振られて喜ぶ根っからの痴女なんだよ」

ショックで何も言えなかった。

私の実母は子供を捨てる人なんだ。
どんな理由があるにせよまともな人ではないとは思っていた。

捨てた理由は分からないけれど、私は自身の願いもあって「きっとどうしようも出来ない理由があったのだろう」と自分に言い聞かせてきた。

それが…そんな…

目眩がする気がして私は先程まで追い詰められていた木に頭を抱えながら自分の体を預ける。

「うそ…うそです…」

「そんなお前がカカシさんに愛してもらえる資格があるとでも?」

「いやぁ…!」

「そんな事実を知って尚木ノ葉に帰りカカシさんにその男を欲する体を抱いてほしいと願うのか?」

「やめて…!」

「痴女は痴女らしく、一人の男に拘らず色んな男に股を開いていろよ!」

「やめてぇ!」

「しっかりしろすず音!」

ガタガタと震え両手で顔を覆い涙を流す私にネジくんが叱咤するように叫ぶ。

「口車に乗せられるな!
お前は本当にそう思っているのか?
お前は本当に、カカシ先生に愛される資格がないと思っているのか?!
もし本当にそう思っているのならそれはカカシ先生に対しての侮辱だ!
それを分かっているんだろうな!?」

「っ……」

「カカシ先生のお前への愛情はこのオレが見ても分かる本気の愛情だ。
その気持ちを、想いを、こんな訳の分からない男の信憑性の欠片もない言葉で簡単に裏切る気か!?
流石のオレも幻滅するぞすず音!」

「…………」

「もっと自分に自信を持て!
お前は決して男だけを欲する欲に忠実な女なんかじゃない。
お前は一度だって、オレのことを…いや…他の男を見た事が無いだろう」

「ネジ…くん…」

「ネジの言う通りだ。カカシはいつだってすず音が大切で一番だ。
その想いを裏切るような事は止めてくれ」

「…………」

ネジくんから叱られ、パックンから諭されて、混乱していた私の頭は少しずつ冷静になり

「ごめんなさい…」

「少しは落ち着いたか?
お前は素直すぎる。確証もないのに簡単に敵の言うことを信じるな」

「はい…ネジくん…」

「とにかく此処はオレに任せて逃げろ。
パックンは今すぐ此方に向かって来てるだろうカカシ先生達、そして木ノ葉の里に戻って火影様に伝令を頼む。薬師カブトと遭遇したと。
緊急用の鷹はさっき返してしまったからな。
定期用が戻ってくるのはまだ少しかかるだろう」

「分かった」

素早くパックンがその場から走り去る。

「でもネジくん、逃げるって何処へ…
旅館の位置は分からないんです。気絶させられて、気付いたら此処にいたので」

「何処でもいい。とにかく山の中で身を隠せる所を探すんだ。
終われば白眼で探して迎えに行く。
奴の目的はお前だ。お前を隠しておく必要がある」

「…分かりました。気を付けて下さいね…」



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