山守月天子

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「すみません………皆さん。でも、間に合って良かったです」

突然聞こえてきた声にハッとするカカシ達。
まるで幻術から現実に引き戻されたような感覚。
いや、もしかしたら幻術だったのかもしれない。
月の幻術は視覚を奪うもの。月の光が見せた幻。
けれど今は白い空間と思っていた物が全て白い煙である事が分かる。量が多すぎて少し目が染みる程。
その煙の出処は足元に大量に転がっている煙玉からという事が分かった。

「僕が今まで溜め込んでいた煙玉…全て使いました。
正直これで防げるかは不安でしたが、どうやら大丈夫だったようですね」

状況が飲み込めないまま声を主を探す。
やがて白い煙とほぼ同化しているサクを見つけた。

「ご無事で良かったです」

ニコリと微笑むサク。その瞳には光があった。
そして、その微笑が先程まで見ていたミソカとダブって見えたのはネジとカカシだけ。

「い…一体何が起きたってばよ?カカシ先生」

幻術から醒めたナルトが真っ白な空間に困惑しながらカカシに問う。

「その前に一旦ここから出た方がいいんじゃないかな?
こう煙まみれだと目立って空から狙い放題だ」

サイの言う通り煙玉の煙はその数が多い分晴れるまで時間がかかるようだ。
煙が晴れる様子がなかなか見られない。

しかしそれをサクが首を振り

「いいえ。この中の方が安全です」

「ど…どうして?」

と、サクラが問う。

「皆さんは何が起こったのか分かりますか?」

「天空にいる月天子から攻撃された。
まるで空から地上に向かって巨大な矢を射るようにな」

と、カカシが答える。
サクは頷くと

「はい。月天子様のみが使える攻撃方法です。
月虹を弦とし、光の矢を奇跡の力で作り出して番える。
しかも矢は一本ではありません。その上弦となる月虹は円。
360度どの方向にも攻撃出来る。月の女神様の弓矢と言われています。
その力で…国を守って下さると信じられていました」


「なるほど、光か。なら確かにこの煙の中の方が安全だ」

納得した様子のネジにナルトはまだ理解で出来ていないようで

「だからなんでだってばよ?」

「煙の中では光の性質上拡散されてしまう。
つまり、形を保てなくなるんだ。
そうなれば殺傷力を失い、いくら攻撃しても煙がある限り我々を傷付ける事は出来ない」

「ふーん?」

「ちゃんと理解したのかしら…」

「もしかしてこの攻撃の為に煙玉を大量に確保してたの?」

カカシはそう言いながらサクを見る。
サクはコクリと頷いて正気の戻った光の宿る目を伏せ

「はい…姉さんの隙を付ける方法が、これしかなかったので」



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