山守月天子

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「もう…無理だよ。終わらせよう」

「そうだよサクのねーちゃん!
認めてもらうって…町の人達みんなゾンビじゃねーか!死人じゃねーかよ!
そんなの認めてもらえたなんて言えねぇよ!
認めてもらうって…絶対そういうんじゃねぇ!」

そう言ってナルトが声を上げる。

「サクと一緒に木ノ葉隠れの里に来いよ。
サクから聞いてる。サクのねーちゃんすっげー努力家で、めちゃくちゃ頑張ってる偉い人で、すっげー優しい人だって!
そんな人を認める人達が全員死人だなんて勿体ねぇよ!」

サクが静かに拘束されたミソカの前に立つ。
ハラハラと涙を流しながらミソカがサクを見上げる。
サクは何も言わずしゃがんでミソカと視線を合わせると…そっと抱き締めた。

「サク………」

「ずっと一人で…辛かったね…」

「サク、サク……っ」

「もう大丈夫。もう…大丈夫だから」

「うう…っううう……!」

「ゆっくり…休んで」

カカシは一瞬の殺気を感じた。

「待て!!」

ドスッ

風が吹いてサクのマントがはためいた。

マントに覆われて見えなかったサクとミソカの様子が見えて、ナルトとサイ、サクラとネジは凝視する。

サクが大切にしていた山守の証である短剣。
いつも背中に隠すように差していた短剣がいつの間にか引き抜かれ、その刃はミソカの腹を貫いていた。

「は……………え?」

ナルトはそれ以外の声が出なかった。

ミソカの口の端から一筋の血が流れる。
その瞳は信じられない様子で見開かれていた。
サクは黙々と手に力を入れて今度は刺し込んだ剣を引き抜く。
ミソカのお腹からブシャ!と血が大量に飛び出して、カカシが拘束していた手を離したのもありその場にドサ!と倒れる。

何者の血を吸っていなかった美しい銀の短剣は、血で汚れ地面に血が滴って…カランと音を立てて地面に落ちた。

サクラはあまりの光景に体が硬直して、思考が止まってしまい動けない。

「サク…!お前…!!」

「こうするしか…もう、方法がないんです」

ナルトが言葉を続けるより早くサクが言った。

「人々を操る為に分け与えた魂はもう元には戻らない。
自我を失ったまま、本来の目的も忘れ暴走する。
魂が削られているんです。生きる為の根源が削られているんです。
ガワである体が傷付いているのとワケが違います。
治す方法なんて存在しません。
僕の命を懸けて断言します」

「でもよ!」

「それに姉さんが死ななければ、姉さんによって操られていた人々は本当の意味で解放されません。
姉さんが死ねば魂は消滅します。
それで…魂を入れられていた人達はやっと自由になり、静かに眠る事が出来るんです」

「だけど!そんな…!こんなのってねぇよ!!」



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