山守月天子

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ナルトは尚も食さがる。

「一緒に木ノ葉隠れの里に来れば何か方法があったかもしれねぇだろ!?
綱手のばーちゃんなら、きっと何か知ってるはずだ!
なのに、なんで簡単に諦めるんだよ!ずっとずっと諦めずに自分の姉ちゃんを止めようとしてたのに!なんで簡単に諦められるんだってばよ!?
おかしーだろ!そんなの!!」

「良いんです。これが…ミソカが望んだ結末ですから…
もう自分では思い出せなくなった、自分の願い」

ミソカを中心に血の海が作られていく。
透き通るような月のように白い肌が、赤く汚れていく。
白銀の月光のように輝く髪が毛先から赤黒く染まっていく。

涙を流しながら虚ろとなった、宝石のように輝く瞳は最早曇っていて脆いガラス玉のよう。

サクラはやっと呪縛から解放されたかのようにハッとして動き出し、すぐさま駆け寄ってミソカに医療忍術をかけ始める。

血は止まらない。あまりにも深く刺され…容赦なく引き抜かれた。
傷口と流れる血の量から物静かで大人しいサクの凄まじい殺意を感じてサクラはゾッとする。
きっと…自分が瞬時に動いて医療忍術をかけられたとしても…もう。

ゴホッと血を吐き、か細い弱々しい声でミソカは言った。

「さ…く……」

瞳から光が消えた。

命が消えた。

呆然とするナルト達に囲まれて…サクはその場に項垂れ力無く、声を上げる事もなく、へたりこんで淡々と涙を流し続けたのだった。













「そうですか…月天子は」

空が白んで朝が近付いてきた頃に皆さんは帰ってきた。

帰ってきた皆さんは重い空気を背負い、言葉無く佇んでいた。

カカシさんはいつも通りの様子で淡々とヤマトさんに全てを報告し、近くで聞いていた私もその内容を知る事になる。

サクさんが…自分のお姉さんを殺した。

サクさんのお姉さん、ミソカさんはその場で埋葬されたとのこと。
私は言葉が出ず…どう情報を頭の中で処理していいのか分からず混乱する。
泣けばいいのか。怒ればいいのか。いつも通りでいいのか。
とにかく何もかもが分からない。

「おそらく先輩達が埋葬の作業をしている最中だと思います。
人々を埋めた地中から光が次々と現れ空に消えていく光景が見られました」

「ミソカが操る為に入れたという自分の魂だろうな。
本体が死んだことで魂が体内から抜けていったんだろう。
サクの言う通り…これで本当に解放されたって事なんだろうな」

「……随分やり切れない最後になりましたね」

「そうだな…」

カカシさんがそう言って私に近付いてきた。
そしていきなり手を素早く伸ばしてくると

「おっと」

「…………え?」

どうやら私は無意識に倒れかけていたようだ。
それをカカシさんが抱きとめてくれたらしい。
彼は心配そうに私の顔を覗き込むと

「大丈夫か?」

「あ……すみません…どうして、急に…」

「無理もない。
まだ体が完全に快復してない状態なのに精神に大ダメージを受けたんだ。
早く宿に戻ってしっかり休もう」

そう言って私を優しく抱き上げてくれる。



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