山守月天子
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カカシさんは振り返るとすっかり覇気のなくなったナルトくん達に向かって
「さっ帰るぞお前達。
当初の任務はすず音を保護し、無事に里に連れて帰るのが目的だぞ。
それを忘れるな」
「……分かってるってばよ…」
「だがまずはすず音の体調をある程度整える必要がある。
一般人がいる以上来た時みたいにずっと走りどおしなんて出来ないからな。
里への帰路を耐えられるくらいまで快復させなきゃならない。
その間に自分達の気持ちの整理を終わらせておけ。
すず音が快復次第、里へ帰還する」
それぞれ返事をするけれど、その声はやはり何処か覇気がない。
みんな優秀な忍。だけどまだカカシさんやヤマトさんのように気持ちの切り替えが素早く出来たり、感情を押し殺し表面に出さない事は…特にナルトくんとサクラちゃんには難しいようだ。
「……あの」
そこに皆さんと同じように俯いていたサクさんが声をかけてきた。
私も含め皆さんはサクさんを見る。
「姉さんは死んだので森の結界は既に解かれていると思います。
もう僕の案内無く…人里に下りられるでしょう。
僕はまだやる事が残っています。
だから…ここで一旦お別れさせて下さい。
何か用がありましたら、僕は此処にいますので何時でも来て下さい」
サクさんが被っていたフードを脱ぐ。
昇った朝日に照られて、白色金の髪がキラキラと光ってとても幻想的だ。
青空のような青い瞳が閉じられて、深々と頭を下げる。
「本当に……本当にありがとうございました」
「サク…」
ナルトくんが切なげにサクさんを見つめる。
「本当に…あれで良かったのか?」
「はい。あれが…姉さんが望んでいた事でした。
もうそれを思い出せない程狂ってしまっていました。
それを叶えてあげたかったんです。
だけどずっとずっと出来なかった。僕一人だけじゃ何も出来なかった。
沢山の人々を犠牲にするだけで……何も出来なかった。
やり遂げられたのは皆さんのお陰です。
感謝してもしきれません。
姉さんを助けて下さりありがとうございます」
「………………」
ナルトくんの表情は何とも複雑で、やり切れない様子だった。
「何も…お礼が出来ずに…申し訳ありません…」
「そんな事気にしなくて良いんだよ。
君は自分だって戦えないのに、山賊に襲われていたすず音を助けてくれた。
これはそのお礼だと思ってくれ」
「いえ、そんな…」
カカシさんの言葉を聞きサクさんは顔を上げて申し訳なさそうに眉を下げる。