山守月天子

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私とカカシさんはひとまず夕食にたこ焼きを買った。

人が混み合う祭りの中近くに運良くベンチがあったのだが、座れそうなスペースは一人だけ。

「(これではカカシさんが座れませんね…)」

私はそのベンチから目を逸らして別の場所を探そうとキョロキョロと見渡し

「…やはりこれだけ人が多いとなかなか座れる場所がありませんね」

「そーねぇ…お、丁度いい所にあったヨ」

「え?どこですか?」

「こっちこっち」

カカシさんが私の手を引いて連れて行ってくれた場所。
そこは私が最初に見つけた一人分のスペースしか空いていないベンチだった。

「ほら、ここ座って」

「で…ですがカカシさんが」

「俺はいーの。それよりも病み上がりのすず音ちゃんに座ってもらいたい」

「カカシさん…」

「別に座りたいと思う程疲れてないから安心して」

ニコッと笑う彼に私も微笑み返し

「分かりました。それじゃあお言葉に甘えますね」

「どーぞどーぞ」

彼の優しさに胸をときめかせながら遠慮がちに空いていたスペースに座る。

そして持っていたたこ焼きを見て

「そうだカカシさん。せめてたこ焼き一番に食べて下さい」

「ええ?別に気を使わなくても……
あー…いや、すず音はこういう性格だったね。
しかもこういう時が謎に一番頑固」

半ば諦めたかのような表情を浮かべる彼に私はおかしくてクスクスと笑い

「はい。頑固です!」

「分かった分かった。んじゃひとつ貰おうかな。
一応護衛任務中だからね。護衛対象者とお祭り楽しむなんて事ほんとはしちゃいけないんだから」

「分かりました」

彼の言う通りだ。
私はカカシさんと一緒にいられるだけで嬉しいけれど
彼はお仕事の最中。
私みたいにお祭りに浮かれていい時じゃない。

私は持っていたたこ焼きをそのまま差し出そうとしたが
なんと彼はマスクをずり下ろし「あ」と口を開けてきたのだ。

「…………」

ポカンとする私にカカシが薄目を開けて

「どうしたの?ほら、あ〜ん」

「………浮かれてはいけない時なのでは?」

「浮かれてない浮かれてない。
護衛対象者のお言葉に甘えて一口貰うだけ。
貰い方なんて、人それぞれでしょ?」

なんて言ってニコッと笑うカカシさん。

「もう。ナルトくん達にバレて火影さんにチクられても知りませんよ?」

「へーきへーき。ほら早く」

「はいはい」

クスクス笑いながらたこ焼きを爪楊枝にひとつ突き刺して、フーフーと粗熱を冷ましてあげる。
ある程度冷めたと判断した所で彼の口の中に運んであげると
カカシさんはパクリと食べて「うん。美味い」と嬉しそうにもぐもぐと食べ始めた。
中身が冷めているか心配だったけど、この様子だと大丈夫そうで
ホッとしながらまるで子供のような彼に私は微笑んだ。



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