山守月天子
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カカシがすず音の護衛をする事になり、自由行動となったネジは荷物を担いで一人賑やかな祭りを抜け出し山彦火山を登っていた。
向かう先は決まっている。
「…サク…」
山に一人残っている山守。
サクはやる事があると言っていたが、ネジは何となくその『やる事』を察していた。
本当ならすぐにでも駆け付けたかったが自分もまたやる事が多く、そして任務中でもある事から勝手な行動は出来なかった。
正式な自由行動になった事によりやっとサクの元へ向かう事が出来たのだ。
夕方の薄暗い山の中を淡々と登っていくネジ。
サクが案内してくれた道を思い出しながら進んでいき、時折キョロキョロと辺りを見渡しながら少しずつ進んでいく。
やがて最後にヤマトとすず音が待機していて合流した場所に辿り着くと、そこにサクがいた。
高台のようになっているそこからはヤマトによって起こされた土砂に埋もれ、何も無くなってしまったかつての月を信仰する国が見える。
その景色がよく見える位置にサクはネジが来た事にも気付かず、一人で太い木の枝を削っていた。
「……やはりな。だが流石に一人では大変ではないか?」
サクが驚いたように体を震わせてから勢いよくネジへ振り返る。
その勢いで被っていたフードがはらりと落ちた。
「ネジさん…!」
「オレも手伝おう」
「あ…でも。今はお仕事中なのでは…?」
「気にするな。今は自由行動だからな」
そう言ってネジはサクに近付きその手元を見た。
サクの細くて白い手には太い木の枝と自分の短剣が握られている。
今は枝の先を尖らせるように削っている最中のようで、所々失敗したのかその形は歪で手も数カ所傷付いている。
「貸してみろ」
「あっ」
ネジは半ば取り上げるように木の枝を手に取った。
そしてその場に座り自分のクナイを取り出して削り始める。
その手際はとても良く、作業のスピードも早かった。
「ありがとう…ございます」
「墓を作っていたのだろう?」
「……………はい…」
「全て埋もれてしまったから、せめて一つだけでも…か。
お前が考えそうな事だと思ったよ」
「ネジさんは…どうして…」
ネジは一度手を止めサクを見ると
「オレが来てはまずかったか?」
「そっそんな事はありません!
ただ、その…どうして…来てくれたのか…分からなくて。
僕は皆さんに沢山ご迷惑をかけて、嫌な思いもさせたのに」
「そんな事オレも含め誰も思っていないさ。
それよりも戦えないのに一人ですず音を守ってくれていた事にみんな感謝していたし、姉を失ったお前をみんな心配していた。
ナルトに至っては『木ノ葉に一緒に行く事を断られても絶対説得する』と意気込んでいたくらいだ」
「は…はぁ…」