山守月天子
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「オレは単にサクの手伝いがしたくて来たんだ。
おそらく埋もれてしまった者達の為に、墓か何かを作るのだろうと察したからな」
「そう…でしたか……」
「地面に突き立てる為に先端を削っていたのだろう?
これはオレがするから、サクは何か添えられそうな物を探してきてくれないか?
何処に何の花が咲いているのか山守であるお前の方が詳しいだろう」
「わっ分かりました。探してきます」
「もう暗くなるからあまり無理して遠くへ行くなよ」
「はい…!」
サクは立ち上がりパタパタと走って草木が生い茂る森の中へ入っていった。
ネジはその背を見送ってから作業を再開する。
元々ある程度作業は進んでいた為、残りを削り歪だった箇所を整えるだけだったので手際の良いネジだとすぐに終わった。
クナイをしまって墓標となる木の枝を地面に置くと、立ち上がってぐるりと周りを見回す。
「鋤や鋸…何処から持って来たんだ?」
一通りの道具が揃っていて、使っている最中だからか近くに纏めて置かれてある。
そしてふと近くを見ると埋められた国を見渡せる場所に一箇所まだ浅い穴が掘られている。
おそらくそこが墓標を立てる場所なのだろう。だが、どう見ても深さが足りない。
ネジは鋤を手に取るとその穴の場所へ向かい、穴を更に掘り始めた。
ザクザクとひたすら穴を掘っているとサクが両手に様々な色の花を抱えてパタパタと戻ってきた。
「あの…摘んできました」
「ああ、すまない。
もうすぐ掘り終わるから少し待ってくれ」
「穴まで…本当にありがとうございます」
「構わん。これくらいどうってことは無い。
それよりもこの道具は何処から持ってきたんだ?
山から出られなかったのだろう?」
「それは……」
サクは少し目を泳がせてから
「それは、昔犠牲になった方々の持ち物でした」
「!………」
「まだ…忍という人達の存在を知る前でした。
手ぶらの方より、何か武器になれそうな物を持っている方にお願いしようと考えて…それで…
結局守れなくて、残った遺品はせめて大切に使わせて頂く為になるべく回収して、別の場所に隠すように保管していました」
「そうだったのか…」
「ネジさん達と出会うまで…僕は本当に沢山の人を犠牲に…」
「そう気負うな。サクにはそうするしかなかったのだからな」
「…………」
「一緒に弔おう。お前が全て背負う必要はない」
「ネジさん…」