山守月天子

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まずは固まっている飴だけをパリパリと食べるサク。

「っ…甘い…」

「飴だからな」

そして次にネジに言われた通りリンゴと飴を一緒に食べる。
ボリボリと飴を噛み砕きながら、シャクシャクと瑞々しい果肉を食べる音がしばらく辺りに鳴り響き
やがてサクがゴクンと飲み込むと

「…美味しい…ネジさん、これ…とても美味しいです」

少しだけ笑顔を浮かべるサクを見てネジも嬉しくなり微笑を浮かべる。

「そうか。それは良かった。
…サクの国であった祭りにリンゴ飴はなかったのか?」

「僕の時代はまだ…」

「……そうか、遥か古代の祭りだったな」

そう言ってネジはサクが持っていた提灯を取る。

「火を借りるぞ。そこにある枝で火を起こそう」

「は、はい」

齧りかけのリンゴ飴を持ったサクの前でネジが手慣れた様子で薪を集め墓標の前で焚火を起こす。
パチパチと爆ぜる火を調整しながら、ネジはぼんやりと眺めるサクに手招きをした。
それに気付いたサクが近付き、遠慮がちにネジの隣に座った。

「あの」

「ん?」

「皆さんの所に帰らないんですか?」

「なんだ。そんなに帰ってほしいのか?」

「いえっそうではなくて…ええっと、すみません。
僕っていつも言葉が足りないというか、うまく言えなくて」

「お前がイヤでないならもう少し居ても構わないだろうか」

「…は…はい…」

しばらく無言の空間が出来る。
パチパチと焚火の爆ぜる音と、サクがリンゴ飴を食べる音。
虫の鳴く声に遠くで聞こえる祭りの音。
そんな静かな空間がネジには心地良かった。

「あの、ネジさん」

「ん?」

サクの方を見るとサクは持っていたリンゴ飴をネジに差し出した。

「食べかけで申し訳ないのですが、ネジさんも一口どうですか?」

「な…」

当然そう言われネジは目の前の食べかけのリンゴ飴を見て僅かに頬を赤くさせる。
慌てて視線を逸らし

「いやっオレは…」

「甘い物嫌いでしたか?」

「別に嫌いではないが…!」

「あっ…そうですよね。やっぱり食べかけなんて失礼でした…!」

「そうではない…!」

うまく言葉に出来ないネジはもどかしさのあまり視線をまたサクへ戻す。
サクは本当に純粋にネジと分け合いたいという気持ちしかないようで、ネジに拒絶され少し寂しそうな目をして差し出していたリンゴ飴を引こうとしていた。

「っ……」

罪悪感が湧きネジが咄嗟にその腕を掴んだ。



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