山守月天子

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「王として…民と、国と共にする事を決めたのです」

「バカな…!」

「それがみんなに認めてもらう事が出来なかった、なり損ないの王のせめてもの務めです。
国と共に生き、国と共に滅ぶ。それが王を継承する者として生まれた者の宿命。
…ネジさん…もう少し早く貴方に出会えていたならば…
貴方が教えてくれたように、運命に抗い別の道を生きたかった。
出来るなら、貴方と共に…」

少しずつ少しずつミソカの体から排出される光が強くなり
やがてそれは空に吸い込まれるように光の粒となって昇っていく。
そして昇る光の量に比例するようにミソカの体から力が抜け始める。
グラリとバランスが崩れた体をネジが抱いて支える。
彼女の瞳はもう、半分まで閉じかけていた。

「ダメだ!逝くな!」

「魂を半分以上使ったせいで、人形なのに自我があるという絶望しか感じなかったこの体ですが…
今初めて私はこの体と込められた魂の量に感謝しています。
そのおかげでネジさんとこうして一緒に過ごす事が出来たのですから」

「ミソカ!」

ミソカが俯かせていた顔を上げてネジを見つめる。
涙を流すその顔の表情は、幸せそうな笑顔だった。

「貴方に会えて、本当に良かった…!」

青い瞳が海に沈むように閉じられていく。

ネジは何も出来なかった。ただそれを見守る事だけしか出来なかった。

昇っていく光の粒をひとつだけでも繋ぎ止めようと捕まえるが、それはするりとすり抜けていく。
抱いていたミソカの体が重くなっていく。その一方で感じる命の重さが軽くなっていく。

「ミソカ…オレは…!」

続きを言葉にする前にミソカの瞳が閉じられた。

体から一気に力が抜けて腕がダラリと垂れる。

ミソカの体から光が少しずつ消えていき、空に昇る光の粒も最後の一粒が昇っていく。

「っ………」

そうして光が収まり、もう動かなくなった彼女の体をネジは力いっぱい抱きしめた。
肩が震え…彼女の服を濡らしていく。

声もなく静かな空間。

その遠くで、花火はフィナーレを迎えたのか一際大きな打ち上げ音が響き渡ったのだった。




























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