山守月天子

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ネジが旅館に戻ってきたのは翌日の早朝だった。

すず音はまだ眠っているが忍達は朝の出発の為に既に起床して準備を始めている。
すず音にはカカシが口寄せした忍犬達を護衛につかせ
それぞれ自分の荷物や仕事を片付けていた。

「あっネジさん。おかえりなさい」

ネジの帰宅に気付いたサクラ。
それを聞いて次に気付いたのがナルトで

「遅かったなネジ。どこ行ってたんだ?」

と普段は団体行動を乱さないネジの珍しい朝帰りに意外そうな顔をして問いかける。

ネジは俯きしばらく考えてから顔を上げ

「少し…話しがあるんだ。まだ時間はあるだろうか」

神妙な面持ちのネジにカカシは何かを察した。

「全然問題ないよ。…なにがあったの?」

ネジは部屋に全員集まっているのを確認したあと、ミソカの事をポツリポツリと話し始めた。

『サク』の正体はミソカであったこと。

しかしそれは魂を『サク』の体に込められただけの存在であったこと。

本体である月天子を殺してしまった事で、魂の片割れだったミソカもまた魂が解放されたこと。

月虹の国の王として…最初から民と国と共にする気だったこと。

その全てをナルト達に打ち明けた。

カカシ以外の全ての忍が目を見張ってネジの話しを聞いていた。

そしてネジが話し終えるとカカシだけが小さく「やはりか…」とぼやいていた。

「なんだよ…それ…」

ナルトが信じたくなさそうに、ネジを凝視したまま搾り出すように声を出す。

「じゃあ…サクも…死んじまったって事なのか…?なぁ、ネジ!」

「…………」

「ネジ!どうなんだよ!!」

思わずネジの胸ぐらに掴み掛かるナルト。
ネジはそんなナルトの腕を掴むと

「離せ…」

「ネジなら説得出来ただろ!?なんで死なせちまったんだ!」

「説明しただろう!
サクの中にいるミソカの本体は月天子だ。
その月天子を殺した時点で、もうミソカの死亡は確定してしまったんだ!
説得した所で…もう、魂の解放からは逃れられない!!」

「っ…!」

「いい加減離せっ」

そう言ってネジはナルトの腕を引き剥がした。

ナルトは腕を引き剥がされ、そして力無くその場に座り込む。

「っ……ちく…っしょお…!」

そして頭を抱え髪をぐしゃりと握る。
一人だけでも救いたいと思っていた、その唯一の人まで死んでしまった。
ナルトはその事に対する悔しさを押し隠す事が出来なかった。



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