山守月天子
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「そんな…なんで…サクさん…っ」
ナルトと同じように座り込み涙を流すサクラの横をネジは通り過ぎカカシの前に来てネジは正座をする。
「ミソカの遺体は月天子を埋葬した横に埋葬しました」
「そっか…中身は自分だったけど、その体は大切な弟サクくんのものだからね。
姉弟一緒に眠る事ができてきっとミソカ王も幸せだろう。ありがとうネジくん」
「いえ…」
「優しくて気高い月の女王でしたね」
「そうだな…」
ヤマトの言葉にカカシが静かに同意した。
「それから」
続くネジの言葉にカカシが視線を上げる。
「すず音には…この真実を伏せるべきだと思いまして…
一般人の身で様々な事に巻き込まれ、実際精神的ストレスで発熱しました。
せっかく体を持ち直し心も快復してきた所に、この真実を伝えるのは少々酷だと思いまして…」
「んー…確かにね。こっちとしても正直これ以上出発を遅らせるわけにもいかないし…
分かった。じゃあこの事はすず音には伏せよう。
どう誤魔化すかはオレが考えておく。
…ナルトとサクラもそれで良いな?」
少し離れた場所で落ち込む二人の背にカカシは問いかける。
二人は返事こそ無かったが、小さく頭が頷くように動いたのが見えた。
自分達も精神的ダメージを受けたというのにすず音の精神面に関して心配していたのを感じられて、カカシはマスクの下で苦笑する。
「なら…残念だけどネジくんが折角作ってくれたお墓には挨拶には行けないね…」
「オレとミソカが作った墓には行けると思います。
土砂で埋められた先に、ミソカとサクの墓はありますので。
せめてそこでお別れをすると良いかもしれません」
「そっか。ならそこに寄ってみんなで黙祷して帰ろう」
チラリと壁に掛けられた時計を見る。針は丁度午前7時を指していた。
「旅館の朝食が始まった時間だしそろそろ良いか。
オレがすず音を起こしてくるついでにミソカ王の事も伝えておく。
ミソカ王は『サク』のまま説明するから、みんなも話を合わせてやってくれ。
ナルト、サクラ。お前らもすず音に会う前に気を持ち直しておくんだぞ」
「…分かってるってばよ」
二人なら大丈夫だろう。
そう思ってカカシは立ち上がり、まだ眠っているすず音の部屋へと歩きだした。
「ネジくん」
そこへヤマトがネジに声をかける。
カカシの背を見送っていたネジがヤマトへ視線を移し
「なんでしょう?」
「君は出発まで少し休みなさい。
…いつも通りに見えるけど、やっぱりまだ動きや表情が不自然だよ」
「…!」
そう指摘されて静かに目を見開くネジ。
「自分もまだまだ修行が足りないな」と心の中で苦笑してから
「…ありがとうございます」
ヤマトの言葉に甘え、自分は少し休む事にしたのだった。
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