わかばいろ

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「聞きたい事があります」

「なんだ?」

「菫星くんや他の被害者達は精神的に死んだまま魂魄になってしまいました。
その後の経過を観察し、手も尽くしましたが回復が見られません。
彼女達の魂魄はどうすれば回復するんです?」

「無理だ。回復は諦めよ。
あの者達は今後一生心が死んだまま生きていく。
たとえ魂魄体から人体へ戻ろうとそれは変わらない。
気になるのであればいっそ殺してやると良い」

「そんな…!仙道の者は殺生なんて許されません!
あんな可哀想な状態のまま…永遠に生きていけと言うんですか!?」

思わず口出しする私。
仙道の者は殺生は許されない。
だから食事も魚や肉といったものは食べられないのだよ。と教わった。
なのに、いっそ殺してもらったほうが楽な状態のまま
これからを生きていくなんて残酷すぎる…!

だが女性はフッと笑うと師匠を見て

「出来るであろう?
お前の持つ六魂幡という宝貝ならな」

「え…?」

師匠を見上げる。
彼は無言のまま厳しい顔で女性を睨んでいた。

「魂魄すらも無にするとは物は言いようだな。
要は魂魄すらも殺してしまうのがその六魂幡という宝貝の力であろう?
故に仙人界で唯一殺生が出来る人物は仙人界教主のお前のみ。
楊戩よ、お前が法であると言うのであれば、仙道の命すらもお前の思うがままということだ」

「何故僕の宝貝の事を知っている」

女性は勝気に笑うだけで答えない。

「お前が楽にしてあげるといい。
教主として、仙道の者を救いたいと思うのならな」

「くっ…」

歯を食いしばり女性を睨み続ける。
優しい師匠が何も悪くない人達の魂魄を消せるはずがない。
でも…師匠がしなければ菫星は…他の被害者達は……

師匠は目を閉じ自分を落ち着かせるようにしばらく無言で立ち尽くす。
やがて目を開くと

「もうひとつ聞きたい」

「なんだ。いい加減鬱陶しいのう」

「チュエの体を元に戻す方法は?
彼女はまだ生きています。魂魄でないのなら生身が貴女の元にあるはずだ。
元に戻して返してもらいたい」

「元に戻す方法か。
ふむ、あるぞ。何の犠牲もない。綺麗なまま取り戻せる方法がたったひとつだけある」

「それは?」

「そこにいるチュエの形をした土人形の四肢をバラし、首を切れ。
人型で無くなれば意識は『この体は人ではない』と認識し、自然と元の体へ戻る。
そうすれば、意識の無い本体も目覚めよう」


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