闘病生活
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「五代目が休みをくれたんだ。
だから、今日はすず音といるよ。…仲直りのデートしよ?」
朝、私の頬にキスをしながらそう言ってきた。
ケンカなのか何なのかよく分からないあの揉め事から一夜が明けた。
一年以上付き合っていて些細なケンカは時々あったが、あれほどの揉め事は初めてで私はどう彼と顔を合わせればいいのか分からずギクシャクしていた。
すると彼から歩み寄ってそっと抱きしめてきた。
「どっか行きたい所、ある?」
向き合った彼の顔には優しく細めた目。
私の大好きな表情だ。
「私、は…」
「うん?」
「特にないのですが…ただ」
「うん」
「ちょっと、歩きたいです。カカシさんと…」
「分かった。
歩くだけのデートもたまには楽しそうよね」
と、再びちゅっと頬にキスをする。
そして大きな手で私の手を握ると
「じゃ、行こうか」
そのまま手を引いて家の外に出た。
まだ朝の時間帯。
朝食の時間は過ぎて皆それぞれ勤めを始めるような時間、まだどのお店もこれから開く予定だったり開いて間もなかったりと様々。
平日なので行き交う人も疎ら。
そんな中、私とカカシさんはふたりで特に会話する事もなく歩いていた。
目的地もない。
何か用があるわけでもない。
「(…どうしよう)」
せっかくのデートなのに…
まだ心の整理がついていない私が悪いのだろうか。
このままだと本当にただ歩くだけで終わってしまう。
せっかくカカシさんから歩み寄ってきてくれたのに。
仲直りのきっかけを作ってくれたのに…
「すず音」
「っ」
ハッと顔を上げてカカシさんを見る。
どうやらいつの間にかぼんやりとしていたようだ。
「無理しなくていい。
…無理矢理俺を信じようとしたり、自分の気持ちを誤魔化して俺に合わせようとしなくていい。
そのせいで出来た溝が一生埋まらなくなるくらいなら…
ゆっくりでいい。俺は焦ってないから…ネ?」
「カカシさん…」
「仲直りのデートだからって別に今日一日で出来た溝を埋める気はないのよ。
そんな突貫工事みたいな脆いもの作ってもすぐにまた壊れるからね」
立ち止まる彼に合わせて私も立ち止まる。
カカシさんは優しく優しく私の髪を梳くように撫でた。