最後の物語
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好きな人と同じ世界を見ていたい。
入院中、一番心に残った言葉だった。
若くして散るあの男性はまだ元気だろうか?
もしかして、もう…
そんな事を考えながら、今日も私は好きな人がいる世界で生きていく。
「もうすぐ川辺だ。そこで少し休憩を取ろう」
「了解ってばよ!ヤマト隊長!」
ナルトとヤマト。
今日はペアでの任務だった。
任務の内容は綱手が地図で指示した周辺の調査という簡単なものなので夕方頃には終わるだろう。
朝から調査を始めているが大して変わった事も起きておらず、むしろ普通すぎて欠伸が出るほどの退屈さすら感じる。
もうすぐ昼という事でヤマトの指示のもと川辺に向かい休憩を取ることになった。
ヤマトが先に到着してナルトを待つ。
ナルトもすぐ追い付いて地面に着地し
「うおああああ!?」
「ナルト!?」
ナルトの着地した片足に縄が巻き付きそのまま吊り上げられる姿になった。
完全に油断してたナルトはそのままブラブラ揺れながら
「え!?すげーデジャヴを感じるってばよ!?
もしかしてカカシ先生が…!」
「カカシ先輩はここにいないだろう?まったく…
しかし、なんでこんな罠が…」
「あ!すみません!それ…私が仕掛けたものです」
声をかけられ振り返るヤマトとヤマトの背後にいる人物を睨むナルト。
背後にいたのはサラリと長い髪を揺らし、法衣のようなゆったりとした服を身に纏いシャラリと涼し気な音が鳴る錫杖を手に持った少し歳を感じる男性だった。
「てめぇなんのつもりってばよ!」
「すみません。それ…うさぎ用に仕掛けた罠でして」
「は?」
「昼食の為に仕掛けたものなんです。
向こうで釣りをしてて少し目を離してたんですが…」
ヤマトが男性の後ろを見ると確かに釣具があり、釣り糸は川に垂れている。
未だブラブラと揺れるナルトを見てニッと笑うと
「なるほど。つまりナルトはうさぎよりも先に引っ掛かったってわけだ」
「ちくしょー!早く降ろしてくれっばよ隊長!」
「はいはい。ちょっと待ってて」
クナイを取り出し縄を切る。
スタッとナルトは身軽に着地した。
足首に巻き付いている縄を取りながら
「悪かったなおっちゃん。
せっかく仕掛けたのに無駄にしちまって」
「いえいえ。
こんな川辺ですから殆ど期待してませんでした。
うさぎでなくとも何か引っ掛かれば幸運ってくらいの気持ちだったので」
「人間が引っ掛かりましたね」
「ははは。さすがに人間は食べられないなぁ」