最後の物語

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「え…旅行、ですか?」

ベットの上でふたり裸で抱き合いながら私はキョトンとして言う。

つい先程情事が終わったばかり。
しばらくキスを交わしながら愛を囁きあっていた私達だが、区切りがついた頃に彼が「あ、旅行に行くから」と突然言ってきた。

彼は一度私にちゅっとキスを落とすと

「そう。
来週の休みに一泊二日だけどお忍びの小旅行に行こうヨ」

「えっ良いんですか?
来週のお休みなんてカカシさんがやっと取れたお休みじゃないですか…!」

「旅行は休みの日に行くもんでしょ?」

「そうですが…
家でゆっくり体を休めた方が」

「だーめ。もう旅館も予約しちゃった」

「え!?」

「だってそうしないとすず音は俺に気遣ってばかりでわがまま言ってくれないんだもーん。
お忍びだけど一応俺には火影って立場があるからさ、護衛の人がつくから二人っきりではないのよネ。
でもナルトとサクラだから平気でしょ?」

「それは特に気にしませんが…」

「旅館も俺がずっと前大名の護衛任務の時に行った事ある温泉街の旅館なのヨ。
結構良い所だったからいつかプライベートで行ってみたいって思っててね〜」

「とても高そうです…」

「俺が希望する旅館になっちゃってごめーんネ?
すず音が行きたい所は新婚旅行の方に回したくて」

「良いんです。
だって…私は特に行きたい所が思いつかないんですから」

「新婚旅行までには決めておいてもらわないと」

「ええ。きちんと考えてます」

再びキスを交わす。

「でも…どうして急に旅行なんて…?
温泉、行きたかったんですか?」

「それもあるけど、俺はすず音に気分転換をさせたくてネ」

「?」

「色々思い悩んでるのに俺には話してくれなくて
それが心の負担となって知らない間に俺から心が離れていく」

トンッと軽く私の胸の中心を指差し彼は言う。

「離さないって、言ったでしょ?
知ってるんだからネ。俺から心が少しずつ離れてきてるの」

「そんな、つもりは」

「やっぱり子供?子供の事で悩んでるの?」

「…………」

「…やっぱり、ね。
すず音…俺は確かに子供は欲しいとは言ったけど
出来ないなら出来ないでも全然構わないんだヨ?
俺にはすず音がいればいい。
それだけで十分だ」

ぎゅっと抱きしめる彼。

私も釣られて彼を抱き締める。



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