わかばいろ

□3
1ページ/5ページ


「うーん…」

楊戩は腕を組み、唸った。

それを見た燃燈道人と張奎はポカンとした様子で楊戩を見る。
先程まで行われていた会議もひと息付き、息抜きで談笑をしていた時に出来た少しの間。
その時に唐突に楊戩が唸り出したものだから二人は突然の事に驚いたのだ。

「どうかしたのか?楊戩」

燃燈が楊戩に問う。

「やっぱりここ最近起こる不可解な事件が気になるのか?」

と、張奎も話に乗る。

「いや、それはもちろん気になるけど
今はその事じゃなくて弟子のチュエの事で少し悩みがあってね」

「弟子の…何か問題でもあったのか?」

「問題なんてとんでもないですよ燃燈様!
チュエはとても優しくて心の清い良い子です。
さすがこの僕が選んだだけはある!」

「自信家だなぁ…」

「戦闘に全く向いていなかったり、物覚えが悪くて少々人よりレベルアップが遅かったりするけど
そんなのは大した問題じゃない」

「ほう。完璧主義の楊戩がそんな事を言うとはな。
前々から思っていたのだが、おまえ程の仙人ならもっと優秀な者を弟子に出来たのではないか?」

「元から優秀な人なんてつまらないじゃないですか。
別に僕が教えなくたって優秀なんだから他の仙人に任せておけばいい。芽は勝手に出るだろうさ。
僕はチュエみたいな、なかなか芽が出ない子が一番やりがいがあって腕が鳴るんです。
自分の育て方次第で彼女が芽吹くか、はたまた枯れるか。
枯らせる気はないからどうすれば芽吹くか毎日試行錯誤で楽しいのです」

「楽しいって。
お前弟子で遊んでないか?」

「え?弟子を持つ仙人ってみんなそんなものじゃないか?
自分が如何に育てがいがありそうかを基準にして弟子を選ばないかい?
せっかく自分が育てるんだから、楽しい方が断然良いじゃないか」

「ふ…私はその気持ち分かるよ」

「僕は分からない…」

と、燃燈と張奎はそれぞれ対象的な表情を浮かべる。

「それで、その弟子に対してどんな悩みがあるんだ?」

「はい…
チュエの人間関係で少し悩みが。
彼女は少し人見知りがあり、なかなか自分から積極的に人間関係を広めていこうとしません。
幸い、とあるきっかけで武吉くんと四不象と出会い一緒に修行をする程に仲良くなれた友人はいますが
やはり彼女も女性です。
僕達男には分からない悩みや、女性にしか話せないような悩みもあるでしょう。
何より、10代という多感な時期の少女を同意はあったとはいえ
友人がいたであろう人間界から仙人界へと連れて行ってしまったんです。
心許せる相手がひとりもいない状態ではチュエもきっと寂しい思いをしていると思うんです。
だから何か力になりたいと思ってるんですが…
生憎彼女と合いそうな女性の知り合いというものが僕には少なく。
その…女性の知り合いというだけならば蝉玉くんという女性がいますが…
どうせなら歳の近い女性がいいのではと…」



次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ