わかばいろ

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「今日はチュエに会わせたい人がいるんだ。
チュエのお客様だよ」

と、師匠に連れられやって来たのは客間。
それも普通の客間ではなく名のある仙人様などが訪れた時に使用する、所謂VIP専用の部屋。
私すらも掃除以外気軽に入る事を禁じられている。
そんな部屋に通される大物のお客様がいらしているようだ。
でも師匠のお客様なら分かるけど、私に?
私はそんな大物の知り合いなんていない。

辿り着いた部屋の前には燃燈様直々が見張り兼警護をしていたらしく、更に混乱する。

「来たか楊戩」

「お待たせしました燃燈様」

「あ…こんにちは燃燈様」

「ああ。チュエもよく来たな。
楊戩、異母姉様は既に中でお待ちだ。
男は一切入る事を禁じられている」

「分かりました。
さあ、チュエ。この部屋の中にキミのお客様がいる。
僕や燃燈様はこの部屋の中に入れないから、失礼のないようにね」

「ええ!?そんな…!
この部屋に通される程のお方が何故私に…?!
そんな高貴な知り合い私にはいません…!」

「それは当然だよ。
今日知り合いになるんだからね」

「!?」

「中にいらっしゃるのは竜吉公主だ。
話くらいは聞いたことあるだろう?
僕も何度か話した事あるしね」

「そっそれはもちろん覚えてますが…
て、ええ!?そのお方がいらしてるんですか!?」

「うん。燃燈様からチュエの話を聞いて会ってみたいと言ってたらしくてね。
チュエも同性の人と話がしたいだろうと思って僕からお願いしたんだよ」

「そんな…私…!
そのような尊いお方と何を話せば…
口が回らず、公主様が楽しめる話題も思い浮かばず、無礼を働いてしまうやもしれません…
私にそのような大役は荷が重すぎます!
どうか師匠、考え直して頂けませんか?」

必死になって、もはや助けを乞う勢いで師匠を見上げる。
師匠はそんな私を見てポカンとしていたが、しばらくして可笑しそうに吹き出し

「そんな固く考える事ないよ」

「そうだ。異母姉様はただおまえと話がしたいだけだ。
別にチュエに異母姉様を楽しませろと言っているわけではない。
もっと軽い気持ちで構わない」

と、燃燈様もそう言って下さるが
正直に言ってまったく気が軽くなる様子はない。

むしろ重くなるばかりだ。



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