わかばいろ
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今日の修行を終えた所で私は師匠に頼まれていた哮天犬の散歩をしていた。
哮天犬は霊獣ではなく師匠の宝貝。つまり武器だ。
けれどちゃんと動物みたいに水も飲むし、喜怒哀楽もある。
差し出せば食べ物だって食べる。
ただの武器として見るには可哀想。
師匠もそんな哮天犬を可愛がっており、自らブラッシングしたり散歩に連れて行ったりしている。
でも元々忙しい師匠だけど、最近はそれに拍車をかけたように更に忙しいらしく
哮天犬の事にまで手が回らず数日前から私に頼んできたのだ。
「師匠と散歩に行けなくて寂しいね、哮天犬」
「ばう」
リードなんて無くても賢い哮天犬はきちんと私の横に並んで歩いてくれる。
やっぱり賢い主人を持つと賢く育つものなのかな?
「(て、哮天犬は宝貝なんだから育つんじゃなくて
そういう性能なのかな?)」
くりくりとした大きな目に、もふもふと長く白い毛並み。
そして師匠を乗せて飛べる程の大きな体。
頭を撫でてあげると気持ちよさそうに目を細め、強請るように頭を押し付けてくる。
「ふふ」
可愛くて思わず哮天犬に抱き着くが、特に嫌がる様子もなくされるがままになっており時々スリスリと頬擦りをしてくる。
「やっぱりそうだ!哪吒にーちゃん、あの人楊戩さんの弟子だよ!」
「あいつが…」
「へー!あの楊戩が女の人を…」
空から賑やかな声が聞こえ見上げると三人の男の子がいた。
ひとりはコウモリのような羽を持つ男性。
もうひとりは羽もないのに空に浮かぶ人。
その人の背には幼い男の子が乗っている。
三人は興味深そうに私の前へと降りてきた。
「あの、貴方達は?」
「オレ様は雷震子」
「ボクは天祥。で、この人が哪吒にーちゃんだよ。
それでこの剣が飛刀。よろしくね!」
『よろしく〜』
「剣が喋った!?
…ではなくて、ああ…!師匠が時々話してパトロール部隊の…
私はチュエです。よろしくお願いします」
「あいつの弟子なのに弱そうだ」
「哪吒にーちゃんチュエねーちゃんは弟子入りしてからまだ数ヶ月みたいだよ?」
「あいつみたいに強くなるのか?いつなるんだ?」
「あ…えっと…」
ズイズイと詰め寄ってくる哪吒さんに私は戸惑う。