わかばいろ

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楊戩は神界へと赴き元始天尊に仙人界での不可解な事件の方向をしていた。

「楊戩よ…一体何が起きておるのじゃ」

「元始天尊様。
詳細はまだこちらでも解明出来ておりません。
ひとつ確認したいのですが、先日神界に飛んできた巨人の妖怪の魂魄は本当にこちらに来ているんですね?」

「ああ。俺っちで良ければ案内するさ」

同席していた天化が言う。

「いいのかい?天化くん」

「むしろ一緒に来て様子を見て欲しいさ。
そいつもだが、ここ最近神界に来る仙道達はおかしいさ」

「分かった。
…元始天尊様も、宜しいでしょうか?」

「うむ。気が済むまでじっくりと調べると良い」

「ありがとうございます」

座っていた椅子から立ち上がり元始天尊に一礼をすると天化に案内され、先日死亡した巨人の妖怪に会う。

巨人の妖怪は楊戩がやって来た事に何も反応しない。
ただ立ち尽くし、呆然と虚ろな目であさっての方向を眺めている。
口も半開きでまるで能面のようだ。
既に魂魄の状態だから生きていないのは確かだが、身に纏う雰囲気は死者というより亡霊だ。
火の玉のように、ただそこに佇むかのように。

「これまでの奴らはまだ会話が可能だったさ。
それでも何もかも諦めたように全員目が死んでたけどな。
だが、こいつはそいつ等よりも更に酷い。
なんと言って良いか…死んでいるのに更に死んでるみたいさ」

「………おそらく肉体的な死というよりも、精神的な死が原因じゃないかと思うんだ」

「精神的な死…?」

「心が死んでるのさ。何らかの理由でね。
最近神界に来た魂魄のほとんどが肉体的に死ぬ前に精神的な死を先に迎えている。
…実は肉体的な死を迎えるより先に精神的に死んでしまうと
その人の魂魄の回復は難しいんだ。
ほら、怨霊とか地縛霊とかよく聞くだろう?
あれらの類は大方が精神的な死を先に迎えた者達なのさ」

「なるほど…」

「だがそれらはまだ強い望みがあるが故になるものだ。
『誰かを呪いたい』『ずっとここにいたい』そんな望みでも言葉を変えるなら希望という事になる。
でも…この妖怪も含め最近の死者の魂魄は何もないんだ。
何の希望もない。持とうとも思わない。
むしろ持てないのではないかと思っている」

「なんでそこまで追い込まれてるんさ…?」

「分からない…本人達に聞いてみても話そうとしないからね。
それに不可解な事はそれだけじゃないんだよ」

「ん?」



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