わかばいろ

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「実はこの妖怪が死ぬ直前、僕の弟子を襲っていたみたいでね」

「おー。そういや女の子の弟子がいたな」

「通りがかった女の子の道士が助けてくれたから怪我も無かったんだけど
その時点でこの妖怪の自我は崩壊していたみたいだ。
女の子の道士はそんな自我が崩壊して見境なく襲う妖怪や人間の仙道を倒してまわっているらしい。
説得を試みた事もあるみたいだがダメなようでね…僕もやむを得ないから黙認する事にした。
そんな女の子の話によると、最近多発している突然死する者達は皆共通して死ぬ直前は発狂するようなんだ」

「な…!?」

「そして僕が一番引っ掛かってるのは
この巨人の妖怪が女の子に倒された時、肉体が残っていた事だ」

「え…?」

「この妖怪だけじゃない。
様子のおかしい魂魄の全員は仙人界に肉体がある。
キミも知っているだろう?死んだ者の魂魄はどのようにして飛ぶのか」

「…………肉体も一緒に飛んで、後には何も残らないさ」

「その通り。
だからおかしいんだ。
それから、この妖怪が死んだ直後魂魄が飛んだ様子もなかった。
なのに魂魄はここにいる。
何もかもがおかしい」

「一体どうなってるさ!?」

混乱したのか天化は頭を押さえながら楊戩を凝視する。
楊戩はうつむき加減で何か考え込むように

「僕にも分からない。
けれど僕はひとつだけ可能性を推測した」

「それはなにさ…?」

「何者かが何らかの方法で仙道の妖怪や人間を使って実験をしているんじゃないかって事だ」

「実験?」

「何の実験かは分からない。その目的もね。
でも…許されるものではないのは確かだよ。
肉体的な死だけでなく、精神的に殺すだなんて悪趣味にも程がある」

「ああ。俺っちも許せねぇさ。
こんなひでぇ事…!
手を貸したいのは山々なんだが」

「気持ちだけで十分嬉しいよ。
そうだね…お願いするとしたら被害者達の様子をちょくちょく見てくれるとありがたい。
僅かでも精神的に回復してくれたら何か聞き出せるかもしれないからね」

「おう、任せとけ!
親父にも言って協力してもらうさ」

「ありがとう」

楊戩は袖から哮天犬を出し、その背に乗る。

「さて…僕はそろそろ戻るよ。また来る」

「ああ。またな!
今度あーたの弟子見せてくれよ」

「いいよ。時間が出来たら連れてくる」

ふわりと哮天犬が浮き「ばうあう」と宙を飛ぶ。
ワープゾーンへと近付き楊戩は仙人界へと戻って行った。



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