わかばいろ
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「哪吒にーちゃん危ない!」
「む」
敵の攻撃から守ろうと天祥くんを抱いて空を飛び、安全な場所に下りて天祥くんを地面に立たせている最中だった。
どうやら相手は哪吒さんを追っていたようで哪吒さんのすぐ後ろで武器である斧を振り上げている。
天祥くんのおかげで反応は出来たが体制も状況も悪く反撃も、攻撃を交わす事も出来ない。
「させないわ!」
ダメージを受けるばかりと思っていたが横から菫星が宝貝を使って強風を起こし、敵の体を吹き飛ばす。
敵は体が吹っ飛び近くの木の幹に背中を強打した。
「よっしゃ!とりあえずこれは没収だ!」
敵の手からポロリと落ちた斧を雷震子さんが拾って取り上げる。
「少しは大人しくなったか」
「ええ…これで話が通じれば良いんだけど」
哪吒さんと菫星が並んでさっきまで戦っていた敵の前に立つ。
背中を強打し咳き込むその人は人間の女性。
結構なダメージを受けたのに原形にならない所から見て妖怪仙人でもないのだろう。
戦いが激しかったので遠くの安全地帯から見ていた私も駆け寄って菫星の横に並んだ。
「この人大丈夫…なの?」
「分からないわ。
手加減したから体は少々痛いくらいで無事とは思うけど…」
「おねーちゃん大丈夫…?」
「天祥、あまり近付くな」
と、雷震子さんが女性に手を伸ばそうとする天祥くんの手を掴んで後ろに下げる。
「あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙!!!!!!
ぃ゙い゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!!」
「っっ…………!!」
突然上がった金切り声に私達は全員耳を押さえる。
キーンと耳鳴りがする向こうで、塞いだ事によって幾らか緩和されたが今でも意味不明な言葉を並べながら女性は叫び続けている。
そして
「っ!」
近くにいた菫星に襲い掛かった。
武器も何も持っていないのに、今度は自身の爪を凶器にして振りかぶる。
「………残念ね…」
もうこの人に自我はない。
そう判断した菫星は心底悲しそうにそう呟くと、宝貝を握って目の前の女性を楽にしてあげた。