わかばいろ
□12
1ページ/5ページ
「肺炎を起こしかけていたから一時はどうなる事かと心配したけど、もう大丈夫よ。
雲中子の話ではだいぶ症状は落ち着いたみたい。
食事も点滴からスープ、お粥と変わって少しずつ取れていってるからこのまま安静にしていれば数日には治るそうよ」
「そうか…ありがとう高蘭英」
高蘭英の報告に楊戩は安堵しながら礼を言う。
数日前、攫われたチュエを取り戻し屋敷に着くとすぐに雲中子に診せた楊戩。
服も体も髪も泥だらけで汗ばんでいた彼女の体を男である自分や他の者達に着替えと体を拭く事を頼むわけにもいかず、張奎を通して高蘭英にお願いした。
雲中子の診察の際も高蘭英が同席する事にし、しばらくチュエの看病と病人食は彼女に頼む事にした。
高蘭英は快く引き受け「ついでだから」と楊戩達の食事も作っている。
「意識もしっかりしてるわ。
診察も終わったし、丁度起きてるからお見舞いに行ってみたらどう?」
「うん。そうするよ」
執務机の椅子から立ち上がり楊戩は部屋を後にする。
早足に屋敷の廊下を進みチュエの部屋を目指した。
窓の外を眺めながら私はボヤく。
「お昼頃…かな…?」
朝に高蘭英様が来て作ってくれたお粥を少しだけ食べて薬を飲んだ。
それからすぐに眠ってしまって…雲中子様と高蘭英がさっき来て診察をして
高蘭英様が「薬を飲む前に何か食べないとね」と言って部屋を出て行ったから多分そのくらいだろう。
今は朝飲んだ解熱剤が効いてるから熱は幾らか引いてるがそれでも平熱に比べると遥かに高い。
体の熱さと怠さも相変わらずでぼうっとする目で青空を見る。
「師匠に迷惑…かけちゃったな……」
私が…弱いばっかりに。
コンコン、と扉がノックされる。
「はい」と返事をすると扉を開けて顔を覗かせたのは師匠だった。
「やぁチュエ。いま大丈夫かな?」
「師匠…!
あ、その…もちろん大丈夫ですが…
あまり見ないで下さい。お見苦しい姿ですし」
「ははは。気にしないから大丈夫だよ」
部屋に入って私のベッドの近くに寄ると高蘭英様が使っていた椅子に座る。