わかばいろ

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かっこよくて何でも出来て、綺麗でとても優しくて。
強くて頭が良くて難しい仕事でも簡単にこなす事が出来る師匠は
きっと『誰かのようになりたい』とか『誰かのように自分にもそんな力があったら』なんて思った事って無いんだろうな。

私には何も無いから…師匠が私を必要とするようなものは何も無いから
師匠に愛される人なんて夢物語のように有り得ない事なんじゃないかなって。

だったらせめて私は師匠を守れるような自分になりたい。
師匠のように、は無理でも
同じ歳頃で、同じ女の子で、同じ自分の師匠に憧れを抱く菫星のような
強くて優しい女の子になりたい。

菫星のようになれたらきっと私も師匠の役に立てる。

師匠に愛されるような人になるにはどうしたらいいかって一時期悩んでいたけれど
やっぱり私はどうしても自分に自信が持てなくて、どんなにポジティブに考えてもすぐに否定の言葉が思い浮かんでしまう。

なら、せめて師匠の役に立てる人になりたい。

師匠が「チュエを弟子にして良かった」と喜んでくれるような
「出会って良かった」と思ってくれるような
そんな…誇りを持てる、かっこよくて強い人になりたい。

それがきっと私の自信にも繋がって…私の為にもなると思うから。

「その為ならどんな犠牲をはらっても構わないと?」

「たとえ貴女が望むものを手にした所で望む結果を得られるかは分からない。得られないかもしれない」

「貴女の中で本来なら有り得ない物、存在しない物を得たり、有り得る物にするという事は
貴女の中にあった有り得たもの、存在していた物を犠牲にして有り得ない物を有り得る物にするという事。
失えば、二度と手に入れる事は出来ない。
だってそれが、『有り得ない物』として変換されたのだから」

「その身に何が起きようと、どんなに辛く苦しい思いをしようと
それは誰も責められない自業自得。
自分だけが悪い、自分だけの業。
誰にも理解されず一生自分を責め続ける傷となる」

「それでも貴女は望むというの?
『誰かの役に立てる自分になりたい』だなんて。
そんな事は貴女のエゴだというのに」

それでも私は…

私は

少しでも…

大好きな人の力になりたい。

大切で、大好きな人の役に立ちたい。

何も無い、何も出来ないこんな自分なんかよりも

何かひとつでも力になれる私になりたい!

それが……私の願い。



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