わかばいろ

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いつか見た時と同じ変わらない美しさ。
サラサラと流れる艶やかな黒髪に映える陶器のように白い肌。
大きな瞳は私を映し、ピンクの花のように愛らしい唇は優しく微笑んでいる。
仙人界の絶世の美女、竜吉公主様。
VIPルームの雰囲気もあって
まるで彼女がそこにるだけで花が咲いたように場が華やかになる。

「久しぶりじゃな。チュエ」

「はい。お久しぶりです」

「なかなか会いに行けなくてすまぬな。
教主の屋敷はここ最近バタバタと忙しい事を燃燈から聞いていたのでな。
少し遠慮していたのじゃ」

「いいえ。大丈夫です。
公主様もお体の方は大丈夫ですか?無理はされていませんか?」

「うむ。気遣い感謝する。
…しかし随分顔が明るくなったな」

「え…そう…でしょうか?」

思わず自分の顔に両手で触れる。

「ああ。初めて会った時おぬしの顔は俯いて暗く、怖々として重々しい表情をしていた。
だが今はまるで太陽のように明るい」

「…それはきっと菫星のおかげです。
この仙人界に来て初めて出来た友人なんです。
私と同じ10代で、しかももう師匠から宝貝をもらってるくらい優秀で。
とっても強くてかっこよくて…優しい女の子なんです。
菫星のおかげで公主様が言っていた自分の問題というのも分かったんです」

「ほう?」

「私…具体的な目標っていうものが何一つなかったんです。
師匠の傍にいられるから。それは目的であっても修行をする上での目標にはなりません。
何のために修行をするのか目標がないとどんな修行も身につかない。
それを教えてくれたのは菫星で…
だから私、まずはその目標を見つけようと思ったんです」

「それで…見つかったのか?」

「目標…というか、願いというか…
最初は師匠に振り向いてもらえるような強い人になりたいって思ってました。
でも…今は少し考えが変わって
少しでも師匠の役に立てる強い自分になりたいんです。
師匠が誇ってくれるような。師匠が『弟子にしてよかった』と思えるような。
そんな人に私はなりたいんです。
大好きな人の力に…少しでもなれたら」

「かわいぃ〜〜〜!」
「素敵いぃ〜〜〜!」

声を合わせてそう言ったのは公主様の後ろにいた碧雲さんと赤雲さん。
なんだか照れくさくて私は少し目を伏せる。

「そうか…明確な目標が出来たのは良い事じゃ。
どのように強くなり、楊戩の力になるかはまだ決まっておらぬのか?」

「まずは最低限自分の身を守れるくらい強くなろうと思ってるんです!
菫星と一緒に修行したり菫星の戦闘を間近で見ていたおかげなのか、少しだけですが戦えるようになったんです!
それは師匠もこの間の手合わせで認めてくれて。
今は毎日一時間程ですが戦闘の修行もしてるんです」

「…そうなのか」



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