わかばいろ

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菫星の足の検査を明日に控えた夜。

いつもの様にお茶を用意してやってきた私に師匠は唐突にこう言った。

「今日はキミに大切な話があるんだ」

とりあえず私は師匠と自分の前にお茶を置き、椅子に座る。

「それで…話とはなんですか?」

いつになく真剣な顔。
何かを決心したように力強い目をして私を見ている。
彼はカタンと座っていた椅子から立ち上がると私の前に来て

「その前に…見てほしいものがある」

「…?」

師匠の目が閉じられる。

「見た後に…チュエの素直な気持ちを聞かせてほしいんだ」

ザワリと風もないのに師匠の髪が逆立ち始める。
顔も俯き、夜の部屋にろうそくの灯りのみというのもあって師匠の表情が分からない。
何が起きようとしているのか分からず私は少し恐怖心を覚えた。

師匠の髪が少しずつ長くなる。
そして、毛先から色も変わっていく。
そんな僅かな変化を私が見た後、彼の姿は一瞬にして変わった。

「………!!!」

真っ白な長い髪。
そこから生えた二本の角。
何かの顔のような被り物をし、その下には異様に白い肌をして目元や口元に模様が施された顔。
開かれた目はギンッと強く瞳孔が開かれている。
いつも私を優しく撫でてくれる手は大きくなっていて指も異常なほど長く、本数も三本。

椅子に座る私を見下ろしてくるそれは、私が毎日見ている美しい師匠ではなく
禍々しく異形な姿をしたものだった。

突然のことに私は目が離せず凝視する。

「これ…は…?変化…ですか…?」

「違う。これは半妖態。
…チュエ、僕は妖怪だ。
これが僕の本来の姿だよ」

「………!」

「正直な気持ちを聞かせてくれ。
誤魔化しても僕には通じない事、分かってるだろ?」

半妖態のせいなのかいつもより言葉が厳しく感じる。

私は驚きと少しの恐怖でドキドキと鳴る胸が落ち着くのを待つと

「…師匠」

私も椅子から立ち上がった。

「顔を、見せて下さい」

「………?」

両手を伸ばして真っ白な肌の顔に触れる。

覗き込むとそこには瞳孔の開いた目に口元を強調するような青い唇。そして顔面に施された模様。
そんな顔には驚きと戸惑いの表情が浮かんでいた。



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