わかばいろ

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「…ああ…師匠。
貴方は間違いなく私の師匠です」

「チュエ…」

「どんなに姿形が変わっても、どんなに顔が変わっても
貴方が持つ雰囲気までは変えられません」

「僕が怖くないのか?今までずっと黙っていたんだぞ」

「何か理由があったんですよね?」

「っ……」

「驚きましたし、正直少し怖かったです。
だって師匠かどうか分からなかったから。
でも…顔を見て、すぐに師匠だと分かりました。
だからもう怖くないです。
どんな姿でも、師匠は師匠です。
私の自慢の師匠です」

「………チュエなら…そう言ってくれると思っていた」

師匠の大きな手が伸びて私の体を抱いた。
両手を使えば私の腰すらも掴めそうなほど大きな手。
三本の指しかない不思議な手。
なのにその温かさは師匠そのものでほっと安心する。
真っ白な髪もサラサラとしていて何も師匠と違わない。

抱きしめながら私は目を閉じ師匠を感じる。

この人は私の師匠。

私の…大好きな人。

しばらく抱きしめあって、やがて師匠から体を離して私の顔を見た。

「キミのような女性に出会えて僕は幸せだよ」

と、師匠は私の頬を手で撫でる。
その手に自分の手をそっと重ね頬を擦り寄せながら

「大きくて不思議な手ですね。
指が三本って不便じゃないですか?」

「五本の指と比べるとちょっとだけな」

「口調も少し変わってます?」

「基本的には変わらないよ。
まぁ…半妖態の時は気持ち心が昂ってるかもしれない」

「真っ白で綺麗な髪ですね。
人間であっても半妖態であってもサラサラしてるんですから、これはもう生まれつきなんですね」

「気にしたことなかったなぁ」

クスッと笑う私に遠慮がちに微笑を浮かべる師匠。

「大丈夫ですよ、師匠。
私はどんな師匠でも大好きです。
妖怪がどんな存在であるかを教えてくれたのが師匠で
一部を見て決めつけるのはいけないと教えてくれたのが菫星です。
ふたりのおかげで私は広い視野を持とうと意識出来るようになりました。
だから…もっと教えて下さい。師匠の本当の姿のこと」

「チュエ…」

もう一度抱きしめられる。

「分かった…話そう。
僕がどんな妖怪であったかを」



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