わかばいろ

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雨が降る日だった。

朝から降り止む様子が微塵も感じられない雨。
いつか見た雨のような激しい雷は鳴ってないし、特に勢いもなくひたすらザーザーと降る。
しかし晴れ間を期待出来るような空の明るさはなくて、どんよりと暗く重い雨雲。

そんな雨。

「早速カメラが役立つとはね。
どうやら夜の内に外に飛び出したみたいだよ。
門のカメラに菫星の映像が残ってる」

「菫星くんは何処に向かったんですか?」

「すまない。そこまでは分からない。
あくまで門の前を映すだけにしてるからね」

「でも門から出て行ったということはその方面に用があるという事ですよね。
雨さえ降っていなければ哮天犬が使えたんだけど、仕方ない。
集められるだけ人を集めて人海戦術で探してみます」

「私も探します師匠」

「ありがとう。
雨も降ってるし体が冷えないように雨具を忘れないように。
また風邪をひかないように無理しない程度でね」

「はい」

「哪吒も連れて行ってくれ。
多分天祥もついてくるだろうし、雷震子も雲中子の指示で探すと思う」

「武吉くんと四不象は既に探しに出てます。
相変わらず行動が早くて助かってるんですが
いなくなったという情報だけですっ飛んでいきましたので
途中で見つけたら一応菫星くんが走り去った方向を伝えておきます」

「猪突猛進だからなぁ。
私もあとで人探しに役立ちそうな宝貝を幾つか抱えて探しに出るよ。
雲中子は多分土人形の研究に専念するだろうね」

「ええ。その方が助かります。
ではまた後で」

「行ってきます太乙様」

「うん。いってらっしゃ〜い」

視線は映像画面に向けたまま私達に手をヒラヒラと振る太乙様。

哪吒さんと雷震子さん、そして天祥くんと合流し三人は空から菫星を捜す事にし
私と師匠は地上を手分けして捜す事にする。
ふたりして雨具を頭から被り、雨を凌ぎつつ動きやすいように服装を整えると

「じゃあチュエ。決して無理はしないように」

「はい師匠」

「また後で」

「はい」

互いに背を向けそれぞれ持ち場に向かう。

運良く私の担当エリアには菫星の家がある。
私ほまず真っ先にそこへ向かった。



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