わかばいろ

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「チュエはしばらく立ち直れないだろうね…
こんな事になるなんて。こんな…あんまりだ」

書斎机に片膝をつき前髪をかき上げるように掴んで頭を抱える楊戩。
そんな楊戩を燃燈と張奎、太乙は重々しい表情で見つめていた。

昨日とは正反対で清々しい程の晴天。

そんな明るい空とは裏腹にそれぞれの心の中と執務室の空気は重く沈んでいる。

チュエと菫星を見つけたのは太乙と武吉、四不象だった。
夜も遅くなり、それなのになかなか帰らないチュエを心配して探しに行こうとする楊戩を
「教主という立場上夜遅くひとりで出歩くのは危険だ」と太乙が止めた。

武吉と四不象が「心配だから」と同行する事になり
チュエならばおそらく簡単に見つかるだろうと人探し用の宝貝の反応を頼りに歩いてやがて辿り着いた菫星の家。

玄関のドアが開きっぱなしだったので覗いてみると
真っ暗な部屋の中で倒れる菫星に、その体に縋り付くようにして覆いかぶさり「誰か、誰か」と弱々しい声を上げ続けるチュエの姿を見て太乙達はひどく驚いた。

すぐにふたりに駆け寄り様子を見ると菫星はひと目で死んでいる事が分かり、武吉と四不象は太乙の指示で楊戩に報告に行き
その間に太乙は現場を見やすくしようと部屋を明るくしてチュエに声をかけた。

すぐ近くに落ちていた包丁で色々察した。

混乱しまくっているチュエの説明は支離滅裂でまるで理解が出来なかったのでとにかく楊戩達の到着を待つ事にする。

楊戩達の到着後、楊戩もひどく動揺したが冷静にまずは菫星の目を閉じさせ軽く黙祷をしたあと武吉と四不象が遺体を回収。
菫星の遺体が無くなったあと、すっかり呆けて立てなくなったチュエは楊戩が抱いて
雨に濡れないよう外套で包み、何も聞かず太乙と共に屋敷へ連れて帰った。

そのまま夜は食事もせず雨で濡れた体を拭いて着替えを済ませるとチュエは気を失ったように眠ってしまい、心配だった楊戩が一晩中傍にいて様子を見ていた。

そして翌朝。
まだ呆けているものの幾らか冷静になったチュエから昨夜の事を聞き、楊戩達は衝撃を受け今にあたる。



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