わかばいろ

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翌日。

哪吒さん、雷震子さん、天祥くんを連れて師匠と私は迷宮の林にやってきた。

「この林を片っ端から壊して行けば良いんだな?」

「ある程度で構わないよ。
自然を壊すなんて少々心苦しいけど対象物の位置が分からない以上仕方ないからね。
いちいち光を反射させるのも面倒だし」

「ボクはどーすればいいの?」

見上げてくる天祥くんに師匠が

「正直危険だから僕らの傍にいてくれるかい?」

「菫星ねーちゃんの為に何か出来ないかな?」

「チュエの傍にいて励ましてあげてくれるかな?」

師匠以外私が土人形であることは知らない。
泣きたいのに泣けない体。
それでも天祥くんはそんな私の手をぎゅっと握って

「元気出してチュエねーちゃん」

「天祥くん…」

「元気になるまでボク達が傍にいるね」

「……ありがとう」

天祥くんの純粋な優しさが嬉しくて嬉しくて…
思わずぎゅっと抱きしめた。
知らないとはいえ、体温のない土塊の体なのに天祥くんは抱き返してくれる。

師匠はそんな私達をしばらく見守ったあと

「やってくれ」

合図を出し哪吒さんと雷震子さんは林の中で思いっきり暴れ始めた。

林のあちこちで木をなぎ倒し、爆破し、岩を壊す音が響き渡る。

そんな様子を天祥くんを抱いたまま見つめていたら徐々に森のように暗かった林が明るくなっていく。

「やっぱり林自体はそう深くもなかったみたいだね」

やがて作業を終わらせた哪吒さんと雷震子さんが戻ってきた。
目の前の林はすっかり太陽の光を差し込ませる爽やかな場所へと変わっていた。
木々の隙間を見れば、奥に野原のようなものも見える。

「ありがとう。ここから先は僕とチュエだけで行ってくるよ」

「おう。大丈夫なのか?」

「心配ないよ雷震子くん。
でもいざという時は頼みたいから此処に控えててくれるかい?」

「分かった。早く行け」

哪吒さんに促され師匠は自身に羽織っている六魂幡を羽織り直すと私に手を伸ばした。

「さ、行こう」

「…はい」

天祥くんから離れ、手を握る。

「気を付けてね。チュエねーちゃん」

見送ってくれる天祥くんにニコリと微笑みかけ私達は林の中へと進んだ。



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