わかばいろ

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「なんだって!?」

「分かっているとは思うがその土人形が一瞬でも『死にたい』と願えばその願いは成就され魂魄は飛ぶ。
生とは皆等しく在るもの。
それを無くしたいと願い、それに見合う対価を払えるものは生だ。簡単であろう?
もちろん痛覚はある。
生きたまま体をバラすか、もしくは気を失わせて体をバラすか。
それはお前が好きに決めると良い」

「そんな…僕が…?!」

「別にお前がしなくても良かろう。誰かに任せても構わぬ。
それとも、その土人形が死を願い魂魄になったのを六魂幡で楽にするか?」

「貴女は…っ貴女という人は…!」

師匠が…私をバラバラに…?
でも、そうしなければ私は元に戻れない。
仮に死を願っても結局師匠が私の魂を消すことになる。

どちらの手段も師匠が苦しむのは避けられない。

「(なら私は…どうすればいいんだろう?
どうすれば…私と菫星のようにならなくて済むのだろう)」

少しでも師匠の気が楽になれる方法は…

「(ない。どう考えても、師匠は苦しむ)」

殺してと迎え入れたらいいの?

殺さないでと嘆けばいいの?

「師匠…」

「チュエ…」

互いに顔を見合う。

師匠の顔は固く強ばっていた。

「さぁどうする?」

女性がパチンと指を鳴らすと透明な棺のような入れ物が現れた。
人ひとり簡単に入りそうな大きさのその中には、紛れもない、目を閉じて眠り続ける私がいた。

あれが…私の体…!

「チュエ!!」

「この体こそお前が切望する愛弟子だ。
返してほしいのだろう?
ならば早くその土人形をバラせ」

「いや…もうひとつ方法はある」

師匠は三尖刀を強く握ると

「貴女を倒すことだ…!」

「愚かな。
確かに本体から土人形へ意識を移動させている最中に私を殺せば阻止出来ただろう。
だが、お前の愛弟子は既に意識が移動してしまっている。
倒すとすれば私ではなく、そこの土人形だ」

「っ……」

「安心すると良い。
私を殺したら土人形にある意識が元に戻らなくなるという事は無い。
腹いせもしたかろう。さぁ、殺すが良い。
私は特に生への執着はない。
むしろ終わりのない命に飽き飽きしていた所だ。
その六魂幡とやらでひと思いに殺るが良い。
お前も最初からそのつもりだったのだろう?」



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