師弟生活
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「ええー!?チュエいないの!?
楊戩だけじゃつまんないじゃない!」
「そう言われてもね蝉玉くん。
そもそも此処は遊び場じゃないんだけど」
「んもー。せっかくハニーの為に買ったお菓子が余ったからお茶をしに来たのに。
仕方ないから楊戩が付き合って」
「付き合ってって…あのねぇ…」
聞く耳を持たず蝉玉はせっせとお茶の準備を進める。
お茶は既に出されていたので蝉玉が持ってきたお菓子を広げるだけだった。
言っても聞きそうにないな。と判断した楊戩は深くため息をつくと観念したように執務机から移動し蝉玉が座っている来客用の椅子に対面する形で座る。
蝉玉が持ってきたお菓子は中に餡が入っている饅頭だった。
「それじゃあお言葉に甘えて頂くよ」
「はいどーぞ」
言いつつ蝉玉は既にもぐもぐと食べ始めていた。
「ところで今日はひとりなんだね」
「ハニーは『チュエちゃんには会いたいけど堅苦しいから彼処は嫌だ』って言ってたわ。
相変わらず浮気性なんだから、もーっ!」
「その浮気性はおそらく一生変わらないんだろう。きみも大変だね」
言いながら楊戩も饅頭を手に取り一口食べる。
「それでチュエは何処行ったの?
まさか愛想つかされて出て行かれちゃった?」
「僕に限ってそんな事あるわけないだろう?
チュエの唯一の家族の弟くんが来月結婚するらしいんだ。
だからその準備の手伝いと祝いをしに人間界に戻っているよ。
急な話だったからきみに報告に行けなかったんだよ」
「唯一の家族?」
「チュエは両親を事故で亡くしてる。
いつからなのかは聞いてないんだけど…もう随分長く弟くんとふたりきりだったみたいだね」
「そうだったの…
ずっと前に起きた奇妙な事件、あたしは全然関与してなかったから知らなかったんだけど…その時もチュエは友達を失くしたんでしょ?」
「…………」
「あの子…あんなに優しくて良い子なのに失ってばかりじゃない。
なんかそういうのあたしイヤだわ」
「蝉玉くんさえ良ければこれからもチュエと仲良くしてくれないかな?
一応雲霄三姉妹とも仲良くしているらしいんだけど…人間の女の子同士というのも必要だと思ってね」
饅頭を食べ終えた楊戩は頼み込むような表情で蝉玉を見る。