師弟生活
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帰りは馬を借りる事が出来たふたり。
楊戩は哮天犬に乗り、彼は馬に跨り見送りに来た武王達と話す
「村の場所は分かっているから馬で行ける所まで行けたら乗り捨てておいて構いません。
あとで臨潼関の者に拾いに行かせますので」
「ありがとうございます周公旦様。
それから…武王様も、本当に色々とありがとうございました」
「おう!お前もまだ若いのに大変だな。
何かあれば力になる。頑張れよ!」
「貴方のようなお方が王になってくれて本当に嬉しく思います」
「よせやい。照れるだろ。
…それより楊戩」
「なんですか?」
「絶対見せに来いよ?お前の弟子」
「そんなに気になりますか」
「ええ!私も気になります。
弟子で将来の結婚相手なら尚更!」
「邑姜くんまで…というか将来の結婚相手って。
分かりました。帰りがけに寄りますから。
それじゃあ僕等はこれで失礼します」
「失礼しました。武王様!」
「ああ!またな!」
武王達に見送られ、ふたりは禁城を後にした。
弟の結婚式まで明日であと三日と迫っていた。
「師匠達はちゃんと間に合うのかな…?」
少し不安に思いながらふたりが去って行った方向に人影が見えないか眺める。
日が徐々に沈む夕方。空や地上は一面橙色に染められている。
仙人界では太乙様が作った宝貝もあり、火の灯りだけでも夜の部屋を明るくさせる事が出来るが人間界にそんな便利な物はない。
基本的に太陽と共に起きて、太陽が沈む前に食事を終わらせ、太陽が沈むと共に眠る。
都会へ行けばそのサイクルは少し変わってくるかもしれないがうちの村では長年変わらない。
なので夕方でまだ明るい時間だが皆食事をとる為に家に入っており外に出ている人はいない。
「(私も適当に済ませちゃおう…)」
仙道だから魚や肉は食べられない。
それは人間界に下りてもきちんと守っている。
「(じゃあ今日はお豆腐を使って…)」
その時、ドンドンと少し乱暴に玄関のドアをノックされた。
「………?」
ドンドンドン。
「すみません!少々尋ねたい事が!」
若い男性の声だった。
「(あ…じゃあ、大丈夫。かな?)」
確か隣の村の村長さんは私より背の低い年配の方で、弟曰く頭髪が薄いらしい。
…………外見のことはさておき。
そんな訳で年配の男性の声には気を付けなければならないのだ。