最後の物語
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修行の帰り道にお墓に花を添えるのは私の日課となっていた。
季節はだんだんと寒い時期へと向かっている為添える花がなかなか見つからなくなっている。
冬場は完全に花を添える事ができなくなるだろう。
せめて雪が積もったら雪かきくらいはしよう。
「(…あれ?)」
仙人界唯一の墓場。春は綺麗な花が咲き乱れ太陽の光をめいっぱい浴びれる美しい場所だけど人目につきにくい為訪れる人は少ない。
だが今日は来客がいた。
こちらに背をむけている為顔は分からないが小さな子供だ。
「……こんにちは」
声をかけると子供は振り返る。
ぷっくりとした丸くて愛らしい顔立ちの女の子。小さめの瞳は私を見て体の向きをこちらに向ける。
服装は立派な刺繍を施された王族のような服を着ており、ゆったりとした袖は垂れ下がって地面に完全について引きずってしまっている。
「まあ。こんにちはお姉さん」
可愛らしい見た目なのにしっかりとした言葉遣いで挨拶を返してきた。
「お墓参り?」
「いいえ違うわ。ここにお墓があるなんて知らなかったの。
珍しくて眺めてたのよ」
「そうね…仙人界にお墓があるなんて普通は考えないよね」
「お姉さんこそお墓参り?
沢山の綺麗なお花を抱えているわ」
「うん。ここに…私の友達のお墓があるの」
「まあ…そうだったの。
わたしもお花を摘んでくれば良かったわ。
一本頂けないかしら?一緒にお供えをさせて下さいな」
「ありがとう。…はい、どうぞ」
と、花束の中から一本花を差し出す。
女の子は両腕の垂れた袖でその花を掴み
「ありがとう!…お姉さんのお友達はどこかしら?」
「こっちよ」
一緒に移動し菫星のお墓の前に止まる。
「ここなの?」
「そう」
「なら、お供えさせてもらうわ」
可愛らしく袖で持っていた花を墓に添える。
「…ありがとう。きっと菫星も喜んでるよ」
「どういたしまして。喜んでもらえてるならわたしも嬉しいわ。
…お姉さんと菫星さんは仲良しだったの?」
「うん…とっても。
私ね、仙人界に来て…仙道の修行を始めてまだ日が浅いの。
初めの頃はとにかく自信がなくて、早く師匠の元から去るべきじゃないかって、師匠の時間を無駄にしてるんじゃないかってずっと考えてた」
「そんな事ないわ。お姉さんはきっと頑張り屋さんよ」
「ありがとう。そんな私を元気づけたり勇気づけてくれたのが菫星なの。
私と同じ歳で宝貝を貰うほどの実力で…とても優しくて強い人で、私も菫星みたいになれたらって憧れてたの。
本当に…仲良しだったの」
「そうなの…」