最後の物語

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楊戩が目を覚ましたのは気を失って三日経った昼過ぎだった。

「やあ楊戩目が覚めたかい?」

「雲中子様…僕は、一体」

「会議中に倒れたんだよ。覚えているかな?」

「はい。最初は特に何ともなかったんですが次第に体が怠くなって…気分も悪くなって」

「毒を盛られてたんだよ」

「!?…僕がですか!?」

「そう。知らない内に…」

「どうやって…」

「私達も考えたんだが今の所楊戩に毒を盛る方法があるとすれば食事くらいしか思いつかなくてね」

「それは有り得ません。
僕の食事管理はチュエだけに任せています。
彼女がそんな事するなんて万が一にも、億が一にも有り得ません」

「…………」

押し黙る雲中子。

「…それは私達も同じ気持ちだよ」

雲中子の反応や意味深な言葉に楊戩は訝しげに眉を顰める。
やがて胸がざわつくような嫌な予感がし

「…………彼女は何処です」

「………」

「チュエは…チュエは何処ですか?
チュエを此処に呼んで下さい雲中子様」

「……彼女は今、地下の牢だよ」

「な……!?」

嫌な予感が的中した。

「なんて事を!今すぐ出して下さい!!
彼女に何の罪があるというんですか!
僕の弟子を…僕の愛する人を、そんな勝手に!!」

「彼女が望んだんだ。信じられないかもしれないけど…
キミが意識を失っている間屋敷内では私達幹部や一部を除いて毒を盛ったのは教主の弟子ではないかと噂が立ち、不審に思われている。
確かに状況的にも立場的にも一番毒を盛りやすいのはチュエだ」

「彼女じゃありません!!」

「それを証明する為にとチュエは自ら牢に入ったんだよ」

「……!?」

「真犯人は楊戩を殺し損ねたのだからまた殺そうとする為に動く。
その時チュエが牢に入れば疑いは晴れる。
それに…今後の為にも必要な事だと言っていたよ。
『教主を守る為なら教主の弟子であれ容赦はしない』というパフォーマンスはね」

「そんな…!」

「私はチュエの言う通りだと思っている。
キミにとっては複雑かもしれないけど、私達にとってこの仙人界を守る為に一番大切なのは教主であるキミだ。
その教主の命を脅かすなら例え教主の愛する人であっても容赦しない。
その為に我々はいるんだ」

「…………っ」



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