山守月天子

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山の中を走りながら私は手を引いて先を走るサクさんに声をかける。

「あのっサクさん。貴方はどうしてこの山に?」

「え?えっと……僕はこの山の山守なんです。
だから山から出られなくて。
気を付けて下さい。あんな奴ら今までいなかった。最近になって居座りだして迷惑してるんです。
追い出したいのですが僕にはどうする事も出来なくて…」

戦えないと言っていたからそれも仕方ないだろう。

「ところですず音さん…でしたか?
お知り合いに忍の方はいませんか?」

「え?ええ…沢山います」

「人里に降りて落ち着いてからで構いません。
もし良かったら僕に紹介してもらえませんか?
なるべく強い方だと有難いのですが」

「あの山賊達をなんとかしてもらいたいのですね」

「へっ?あ、そ…そうですね。
そのぅ…山賊以外にお願いしたい事もあるのですが」

さっきから妙に話が噛み合わない気がするけど、悪い人ではないように思えた。
ネジくんがチラリと言っていたけどカカシさん達が此方に向かっているようだ。
ネジくんと合流出来たら事情を話してお願い出来ないか聞いてみよう。

「この辺りには崖があってその下は川になっています。
その川の先が人里なので、川に沿って走れば着くことが出来ます。
まだもう少しかかりそうですけど頑張って下さい」

私の手を握ってくれるサクさんの手は冷たい。
私を気遣いながらもきっと彼…彼女?も怖いのだろう。
手を注意深く意識すれば小さくカタカタと震えているのが分かる。

「あの…失礼かもですがサクさんは女性ですか?男性ですか?」

「へ!?」

白い肌の顔を真っ赤にして被っているフードを更に深く被ってしまった。

「あのっ見た目通りの性別です…!」

「……………」

とても綺麗な顔だけど、中性的なので分からない。

「すみません…!紛らわしい顔で…」

「いえっそんな!私こそ初対面の方に失礼な事を…すみませんっ」

結局性別は分からなかったけど本人はどうやらその中性的な顔を気にしているようだからこれ以上は聞かない事にした。
そのまま気まずい空気のまま走っていたが、サクさんがピタリと足を止める。
慌てて私も足を止め

「サクさん…?」

「まずいですね…この道を塞がれたら人里まで下りられない…!」

サクさんの前には先程私に襲いかかってきた山賊のひとりが立ち塞がっていた。



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