山守月天子

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「ネジさん…どうか私のことなど忘れて下さい」

「忘れるなど出来るわけがないだろう!」

ガシッとネジがまるで逃さないようにサク…ミソカの腕を掴んだ。

「何故殺した!他に方法があったかもしれないのに…何故自分を殺したんだ!」

「もう…それしか方法が無いんです」

「分からないだろう!
お前の時代ではそうだったかもしれない。
だが、今はもう時代が遥かに進んでいる。
何か方法がある可能性はあったんだ!
お前だけでも生き続けられる方法があったかもしれないんだ!
木ノ葉に一緒に来てくれれば…!」

ミソカはフルフルと頭を振る。

「木ノ葉に行く前に…まず結界が壊せません。
結界も…操られていた人々も、本体である『ミソカ』を殺す事で解除と解放がされます。
そして僕もこの山から出てしまえば『ミソカ』の支配圏から出てしまいそのまま魂が抜けて死体になります。
死んだ弟サクの体に、自分の魂の半分以上を込められただけの私ではどうする事も出来ません」

「魂の…半分以上?」

「『私』は…せめてサクだけは完璧に生き返らせたいと思い
奇跡を使って自分の魂の半分以上をサクの体に入れたんです。
サクの生前の性格そのままに、サクの生前の記憶そのままに。
何もかもを全て丸ごと完璧に蘇らせたくて…魂も奇跡も惜しむ事なく使いました」

「………」

「その甲斐あって『サク』は完璧に蘇りました。
他の魂を入れられただけの人々とは違う。
本当に生き返ったように『私が作ったサクの性格と人格、記憶』を持って動いていました」

それを聞いてネジは結界突入前に現れたカブトの言葉を思い出す。

怯えるサクに追い詰めるように言い放ったあの言葉。


ーー偽物の人格

ーー仕込まれた性格


「(あいつは一体どこまでミソカの事を…っ)」

「けれどいつの日からか…異変が起きたのです」

目を伏せて考えていたネジだが、言葉を続けるミソカにネジはまた視線を向ける。

「まるで…自分が鏡合わせになっているように感じるようになっていました。
目の前にいるのはサクなのに、まるで自分のように。
そして『サク』も…まるで自分がミソカであるように感じていました。
…おそらくですが魂を必要以上に使いすぎた結果、ミソカの自我が『サク』の中でも芽生えてしまったのです」

「…!」

「それをきっかけに『ミソカ』は狂い始めました。
既に魂を少しずつ使っていたのもあり、それは加速する一方です。
本体の『ミソカ』は自我を失っていっているのに…『サク』の私はミソカのまま。
私は『サク』の体で本体である自分が自我を失い狂っていく様子を見守る事しか出来ませんでした。
魂を失えば失う程自我も崩壊していくのですから当たり前です」



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